学術情報

合成吸収糸 モノフィラメントの評価

中島尚志
北里大学獣医学部卒業。全国の動物病院からの依頼を受けて年間600件以上の手術を執刀する。
縫合糸の近年の動向をみていると、針付合成吸収糸の販売数量が高まっている。とりわけモノフィラメント(単糸)の成長性が高い。合成吸収糸モノフィラメントが縫合糸のスタンダードとして評価されてきている理由と、縫合糸を選択する際のポイントを中島先生に伺った。

-ここ数年、モノフィラメントの販売数量がブレイド(編み糸)と比較して伸びています。モノフィラメントが先生方に評価され、受け入れられている理由を中島先生はどうお考えですか?

合併症や感染等の術後のリスクを考えれば、モノフィラメントを使わない理由はないと思います。最大の問題はコストが高いこと。
ただ、手術全体の費用から考えれば、縫合糸のコストの占める割合は小さなものです。合併症や感染等のリスクが大きい糸を使うということは、患者側にそのリスクを負わせていることに等しい。わずかなコストでそのリスクを減らせるのであれば、やはりなるべくリスクの小さい高品質なものを選択すべきでしょう。

-リスクを回避するとは具体的にどのような点でしょうか?

例えば、腸管等の消化管の縫合時では、ブレイドを使うとどうしても毛細管現象で細菌を吸い上げてしまいます。モノフィラメントは糸の性質上それがないので、感染のリスクを考えると、やはりブレイドよりもモノフィラメントを選択することになります。 また、縫合時に組織をなるべく傷つけないという点も大きなポイントと考えています。ブレイドは構造上縄のようになっていますから、表面がコーティングされているとはいえ、組織を通り抜ける際、どうしても組織に傷をつけやすい。その点でもやはりモノフィラメントが有利です。モノフィラメントのなかでもPDSUは糸が柔らかく、組織に傷をつけにくいように思います。

針と糸のトータルバランスが大切

もうひとつ、針の切れも大切です。針の切れが良ければ、その分組織を傷つけません。針は先端の鋭さではなく、組織を通り抜ける滑らかさが重要。見た目が鋭いからといって切れが良いというわけではないようです。良い針とそうでない針とでは、4針目くらいから組織抵抗感の違いがはっきりとしてきます。針の切れが良いのはエチコンだが、最近ではタイコの針もかなり良くなってきていると感じます。

例えば耳の軟骨部分など硬い部分を縫合する際も、できれば丸針を使いたいところです。角針では組織が裂けたり傷ついたりしますから。針の切れが良ければ、硬い部分でも丸針で縫合することが可能です。このような点で、針の切れの違いが手術の質を大きく左右しますね。 やはり針と糸のトータルバランスでみて、高品質な縫合糸を選択するべきです。良い針や良い糸は、使ってみればわかりますよ。

-今までブレイドに慣れている先生がモノフィラメントを使用したときに、やはり多くの先生が違和感をお持ちになるようです。実際、いったんモノフィラメントを使ってみたものの、使いにくいということでブレイドに戻られる先生方も多いようです。

そういう感覚はあると思います。モノフィラメント独特のつるつるとした感じや硬い感じが、きちんと結べなさそうな感覚や、切れてしまいそうな感覚にさせます。

ただ、実際モノフィラメントは正しく使用すれば性能を発揮します。ブレイドとは糸の構造が違います。違うものを同じように扱えば、ぶちぶちと切れたりするわけです。なぜ糸が切れるのかを考えて、少しやり方に修正を加えていくことが必要になってきますね。

例えば、モノフィラメントは構造上ねじれに弱いですから、結紮時には結び目をしっかりと見て確認しながら進めます。結び目がずれているようならそれを調節して結んでいけば大丈夫です。もうひとつ、ぶちぶち切れるという点に関しては、タイ・ダウンの際に左右の糸を均等に引っ張れていないと切れやすくなります。一方の糸にもう一方を結びつけるというようなやり方になってしまうと、やはり切れてしまいますね。

縫合は左右均等のタイ・ダウンが重要

左右均等のタイ・ダウンが実現されている状態

一方の糸にもう一方を巻き付けてしまっている状態


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