学術情報

病院での歯科処置とホームケア

  • とだ動物病院 院長 戸田 功

口の中を見よう

歯科疾患はコンパニオンアニマルに最もよく見られる問題の一つです。3歳以上の犬・猫では80%以上の割合で歯周疾患を生じており、一番多い疾患です。またコンパニオンアニマルはこれからますます高齢化がすすみ、歯周疾患をもつ患者はさらに増え続けると考えられています。慢性の歯周病は心臓、肺、腎臓等に菌血症の結果であろうと思われる慢性的な病変を引き起こすといわれています。

歯科疾患は高齢動物だけの疾患ではなく、若い患者でも歯科疾患は見られます。例えば小型犬種において乳歯永久歯交換期に乳歯が抜けないことによる不正咬合が多く発生しています。いつまでも健康な歯でいてもらうためにも、若い頃からのデンタルホームケアが欠かせません。

適切な予防歯科処置とホームケアは、予防歯科における2本柱であり、そのどちらもきちんと出来ないと、コンパニオンアニマルの口腔衛生を良い状態では保てません。飼い主に予防歯科処置とあわせてホームケアの重要性を理解してもらうことが最も重要なことです。

病院での歯科処置

スケーリングなどの予防歯科処置が適切に行われないと、歯周病は容易に進行してしまう。歯周炎が軽度であれば、患者の口腔内衛生は、予防歯科処置により改善できる。根尖周囲病巣や進行した歯周炎の患者では、さらに抜歯やフラップ形成などの歯周外科処置を行うことで口腔内の衛生状態をかなり改善できる。適切な歯科処置を行うことが重要である。

[レントゲン検査]

歯科用X線撮影
日常の小動物の臨床では、標準X線検査は欠かすことのできない重要な検査である。特に骨折などの硬組織の病変には、X線検査なしには評価や処置ができないと言っても過言ではない。口腔内におけるX線も、それと同様に重要である。つまり歯周病の治療や、歯の処置を行うためには、他の口腔内検査とあわせ、口腔内X線による評価が必要不可欠である。

★口腔内X線の検査で重要なポイント
できるだけ歯科専用のX線装置とフィルムで撮影することと、適切なポジションで撮影することである。

歯科用フィルム

D感度のインスタントフィルム f(阪神技術研究所、以後「阪神」)が使いやすい。現像定着液のポンプからの注入式で、現像機や暗室を必要とせず、簡単に1分程度で現像できる。

プッシャー

プッシャー(定量処理液注入器)・専用現像定着液・硬膜剤セット;上記阪神製の歯科用インスタントフィルム専用の現像セット。写真はD感度フィルム用DQDプッシャー用。
針による注入式のために、現像機が不要なことが大きな特徴。

ぺアラー

阪神の歯科用フィルム専用のフィルムパッケージのオープナー。フィルムパッケージは指でも開けられるが、ペアラーを使えば、簡単に開けられ、液の飛散がなく手や衣服を汚さずにすむ。

フィルムクリップ

現像したてのフィルムは持ちにくいため、フィルムの保持には欠かせない。乾燥時も使用。

パッ撮る(二等分面投影インジゲーター)

撮影方法のところで述べるように、二等分面法で撮影する際に使用する。 歯軸アームを歯軸にあわせるとコーンガイドがX線ビームの方向を示す。 それに平行にしてX線ビームの方向をあわせて撮影する。

口内法【歯科用レントゲンフィルムを口腔内において撮影する方法】
平行法
通常のX線撮影と同様に、歯の長軸とフィルム面を平行におき、この面に線源を直行させてX線を照射します。
二等分面法
歯の長軸とフィルム面の作る角度の二等分面に対して線源を直行させてX線を照射します。
[プローブ検査(プロービング)]

歯牙と歯周組織の評価には、レントゲン検査に加えて、プローブによる検査が必要である。プロービングでわかることは、ポケットの深さ測定だけでなく、歯肉増殖や後退の測定、根面の歯石などの触知、炎症の程度による出血のしやすさ、根分岐部病変の程度などである。

ペリオプローブ

歯周ポケットを測定するための目盛りがついており、歯科レントゲンとのコンビで歯周病の進行程度を評価する重要なツール。

[予防歯科処置]
歯牙と歯周組織の評価
プラークとの歯石がついていても、歯槽骨の吸収が伴っていなければ歯肉炎かそれ以前の段階であり、予防歯科処置で健康な歯と歯周組織に戻すことが可能である。処置後のホームケアで十分に口腔内を健康に維持可能である。
予防歯科処置
予防歯科処置とは、プラーク、歯石、着色を歯面(歯冠と歯根の表面)から、スケーリング、ルートプレーニング、ポリッシングによって取り除き、局所の刺激因子を除去し、再付着を予防する方法である。
[抜歯処置]

歯槽骨の吸収がみられるような歯周組織の破壊がある場合はすでに歯周炎の段階であり、処置をしても歯周組織は元には戻せない場合が多い。歯周炎の程度に応じて、予防歯科処置のみでは不十分なことも多く、抜歯や歯周外科処置が必要となる。その判断はプロービングのみでは判断できないことも多く、処置前に歯科レントゲンが必要となる。特に根尖部の病巣はレントゲンなしに判断できない。

メス/メスホルダー

メスは先端が細く小さいものが使いやすい。No11,15など。

骨膜剥離子

外科で使用するものでよい。幅は広くない方が使いやすい。ヘッドが小さく薄目のものは、猫の犬歯の抜歯時に粘膜を剥離するのに便利である。

ラグゼイター/抜歯用エレベーター
抜歯する歯の大きさによりサイズを変える必要があり、乳歯専用のセットや一般抜歯用のさまざまな大きさのものが必要。ブレードが薄目で、幅が細目から太目のものまで3〜4本あると便利である。
抜歯鉗子

歯を保持、回転させて抜歯する器具。スケーリングの前に大型の歯石を割って除去する際にも使用する。嘴部(先端)が緩く曲がっていて、手のなかにはいるくらいの小さめのものが使いやすい。嘴部の内側に溝があるものが、歯が滑りにくく使いやすい。細いものとやや太めのものがあると便利である。

残根鉗子

手術用のモスキート鉗子でも代用できるが、残根鉗子は小さな残根などを滑らずに取りやすいため、あると便利である。



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