学術コラム

高齢動物の看護 〜動物看護師の視点から〜

  • 一般社団法人 日本動物看護職協会
    専務理事 齋藤 みちる

【高齢動物看護】
動物看護は、動物達が健やかな一生を全うできるように援助することを目的としています。動物医療の発展と動物の平均寿 命の上昇により、動物の世界でも高齢化は様々な課題を生み出しており、動物看護・介護の重要性は高まってきています。 ここでは動物看護のポイントと、揃えておくと便利な製品、私見ではありますが、私自身の経験談をご紹介いたします。

褥瘡を作らないためには

寝たきりの動物は、関節や骨の突出している部分に体圧がかかり褥瘡が出来やすくなります。特に大型犬や体位変換が少ない動物の場合におこりやすいです。酷くなると化膿したり、骨が露出したり痛みも伴い大変辛い状況になります。

(1)寝床の工夫

低反発性の素材で重みを吸収する素材、固過ぎず極端に柔らか過ぎない素材、ドーナツ型のクッションなどで関節をカバーします。また、体位変換がしやすい工夫があり飼い主さんへの腰の負担などが少なくて済むもの(敷物にハンドルがついているものなど)汚れたらすぐに取り替えられるもの、防水加工のあるマットを敷物の下に引いたりして、飼い主さんの負担を減らしましょう。

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(2)直接関節へ行なう工夫

犬種に合わせた大きさの床ずれ予防関節サポーター、または医療用の自着性弾力包帯などを使って関節を保護します。しかし、すでに褥瘡が出来ている場合は、主治医の指示に従って使用するようにしましょう。

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私の経験談

褥瘡は出来てしまうと瞬く間に大きくなります。寝たきりのみならず、運動性が低下している動物の生活を援助する時は看護計画に早めに取り入れるべきです。飼い主さんも理解して気を付けて予防対策をしていても、褥瘡が出来てしまうこともあります。

褥瘡は酷くなると骨の露出が起きたりと非常に見た目も悲惨な状態となり、感染のリスクも高まります。そのような時、飼い主さんはご自分を責められる場合が見られます。「自分の介護の努力が不足している。一生懸命介護しているのに介護の方法が間違っていたのではないか。」など、責任を感じて精神的にかなり参ってしまわれる方が多いように思います。

診察や往診の度に「かわいそうに、私のせいで骨まで見えてしまって…」と毎回泣かれる方もいらっしゃいました。飼い主さんの精神状態が不安定になると介護されている動物にも決して良い結果には繋がりません。
動物たちは飼い主さんの笑顔を見ることが一番の幸せだと思います。ですが悲しい事に、介護に無関心の飼い主さんもいます。

ある飼い主さんの犬は、寝たきりでも外飼いで置かれていて、介護の不足からか褥瘡ができ、放置したためハエウジ症になる犬もいました。

褥瘡だけでも痛みがあるのに更なる痛みを与えることとなり、どんなに辛いかと胸が苦しくなりました。見ていて辛いだけでなく、治療処置も大変なものになります。
このような不幸な思いを動物にさせないためにも、褥瘡が予期される場合は出来る手段は何でも使って予防することが大切だと思います。

清潔を保つためには

(1)体を拭く工夫

寝たきりでなかなかシャンプーが出来ない動物は、ぬるま湯で湿らせたタオルなどで体を拭くことも大切です。二次感染の予防のためにも排便後、排尿後、食事後の口回りなどもこまめに拭いてあげます。1回1回タオルを用意するのが負担になる飼い主さんには、動物の皮膚pH 考えて作られた、動物清拭用のウエットティシュやウォーターレスシャンプーなどを使っていただくと良いでしょう。体臭も落ち着きます。

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(2)ブラッシング

寝たきりの動物はどうしても筋肉が落ちて骨が目立ってきます。ピンブラシやスリッカーなどでは、そのような動物には刺激が強過ぎる事が多いようです。柔らかめのラバーブラシや軍手状で、飼い主さんが手を入れて使えるような布製ブラシを優しく使うことによって、皮膚の新陳代謝を高められます。またマッサージやスキンシップにもなり動物のストレス軽減にもなります。動物が嫌がってかえってストレスを強く与える場合は、無理に行なうのは止めましょう。

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(3)敷物

動物の寝床の敷物は取り替え易く、洗い易いものを用意し、いつでも清潔な環境を保てるようにしましょう。また冬場は体温低下に注意するため、ホットカーペット等を用いると良いでしょう。その際は低温火傷を起こさないように気をつけましょう。ホットカーペットを使わなくても温まる素材もあるようです。

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(4)口腔内の清潔

寝たきりの動物は、なかなか歯磨き用のオモチャで遊んだりすることは出来ません。運動性が低いため、口腔に食べ物が残ったり、こびりついたりもし易いです。歯ブラシに慣れている動物の場合、歯磨きを行なって頂いて問題ありませんが、そのような習慣が無い場合は歯磨き専用のウエットティシュで歯をこすって、歯や歯肉を清潔にすることが出来ます。オーラルスプレーを使用するのも良いでしょう。

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(5)消臭・抗菌剤

排泄を失敗した時や動物の寝ている場所を掃除する時には、消臭効果が強く、抗菌効果もある消臭・抗菌剤を使用すると良いでしょう。安全性が高く動物の体にも優しい物が出ています。最近の消臭機器の中には、消臭機能以外にも除菌機能があるなど性能が良い物もあるようなので、それらを使って空間を消臭すると良いでしょう。

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私の経験談

寝たきりの動物は排泄時に体表に汚れが付きやすく、また、大型犬などになるとシャンプーなども頻回にはし難いために、匂いもするようになります。そのような患者動物の往診時に1歩玄関を入ると、あまりの臭気に驚くこともありました、汚れを放置しておくと二次感染にも繋がり、新たな疾患に罹患しかねません。
また、飼い主さんのみが来院されても、その動物と同じ匂いが染み付いていることもあります。
いつも一緒にいるのだな!と微笑ましくも思いますが、清潔を保つことは介護の基本となるので、動物の健康を守るためにも感染防止にも生活環境の整備には気を配りたいものです。


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