犬の保定―処置別の保定法―

白金高輪動物病院 中央アニマルクリニック 総院長
獣医師 佐藤 貴紀

保定とは動物を検査治療する際に動かないようにすることが大前提にあります。
その大前提を元に、犬の保定は犬種、性格、大きさそしてさまざまな状況において臨機応変に変える必要があります。ここですべての保定を説明する事はできませんが、獣医師の目線から保定が重要とされる状況別に説明していきたいと思います。
また、保定は検査を行う(保定をしてもらう側の)人間が検査などがやりやすい保定をしてあげることが望ましいと言えます。
そして、保定をしてもらう側の人間は保定者に対し感謝の気持ちを常に持つことを念頭におく必要があります。

【1】採血(頸静脈、サフェナ)の保定

後肢伏在(サフェナ)静脈採血

保定時と動物との位置関係

保定者の身体の前面と動物の側面が接する位置関係

保定に必要なもの

エリザベスカラー、ヒッポカラー、駆血帯など

保定者

小型犬は1人、中・大型犬は1人 or 2人

(1) 保定者が利き腕とは逆の腕で顔が動かないように頸部を保定する。
ポイント

顔が動くと体も動くため、顔をしっかりと固定すること。

◎おとなしい犬の場合
保定者の腕をまわして犬の頸部を固定。この際、保定者は犬と体を密着させる。

◎2kg未満の犬の場合
特に小さい小型犬などでは抱っこをして保定。片方の手で胸の部分から抱え込む。

◎保定を嫌がる犬の場合
後ろ足が動きそうな場合は顔が動かないように犬の頸部、肩甲部、上腕部を脇で挟み保定。

◎中・大型犬の場合
保定を嫌がる犬と同様に、後ろ足が動きそうな場合は顔が動かないように犬の頸部、肩甲部、上腕部を脇で挟み保定。もし、動きそうであれば保定者を2人に増やし1人は顔を保定。

(2) 保定者が利き腕を使い後ろ足を固定。
ポイント

膝関節を固定していないと、足の伸展運動が起こるためしっかりと関節を固定する。

◎おとなしい犬の場合
膝が動かないように膝関節を固定し、親指で大腿部の尾側側を固定しその他の指で膝の頭側側の関節を固定する。

◎2kg未満の犬の場合
抱っこをした場合でも保定は変わらないが、保定していない逆の足が動いてしまわないように写真のように両方の足を持ちながら保定。

◎保定を嫌がる犬の場合
後ろ足が動く場合は、両手で保定。利き腕は膝関節を固定。片方の手は写真のように大腿部を頭側から持ち、前に動かないように保定する。あまりに動いてしまう場合は、膝の関節の固定がうまくできていない可能性があるため、利き腕の固定の上からもう片方の手で膝関節を固定。

◎中・大型犬の場合
中もしくは大型犬も同じ。この場合は駆血する足が台についていた方が動きにくい。あまりに足が太い場合は両手で保定をする。この場合は片方の手で膝関節を固定。

(3)しっかりと保定ができたら最後に駆血を行う。
ポイント

血管を怒張させるために駆血は重要。犬の犬種によっては駆血がうまくいかない場合もあるため上下にづらすなど行う。大型犬は手の全てを使い駆血を行う。

◎おとなしい犬、2kg未満の犬の場合
親指で大腿部の尾側側を駆血。この場合は駆血したら動かさない。血管が怒張しない場合は、親指を上下に動かす。

◎保定を嫌がる犬の場合
上と同じ。両手でおさえる場合でも駆血部分は変わらない。

◎中・大型犬の場合
親指で駆血ができない場合は利き手で膝関節を、もう片方の手で駆血を行う。また、採血者に動きやすい旨を伝えておくことも重要。

ポイント

採血する足が診察台に付いていると安定します。

頸静脈採血

保定時と動物との位置関係

小型犬では保定者の前面と動物の後面が接する位置関係
大型犬では保定者の前面と動物の側面の位置関係

保定に必要なもの

エリザベスカラー、口輪など

保定者

1人

ポイント

顔と頸をしっかりと固定し、まずは動かないようにする。顔が左右に動くと血管も動きわかりづらくなる。動きそうな場合は採血者に伝えより強度のある保定に変更する。頸の採血部を露出する際に皮膚を引っ張りすぎないように、いわゆる顔を上げすぎないように気をつける。特に多く血液が必要な場合や大型犬などには適している。

(1)犬座姿勢にします。

(2)おとなしい小型犬の場合は下顎骨を支点に両手の指で顔を上にあげます。上げすぎると前手が診察台から離れ動いてしまうので注意が必要です。欠点は前足がフリーなため動いてしまう可能性があります。(A)
大型犬では、片手で顎を持ち上げ、片方の手で頭を支えます。(B)

この時、両方とも手首と腕、体を密着させ犬の体を挟みます。

ポイント

嫌がる場合はエリザベスカラーをつけることで保定がしやすくなります。

動きそうな場合は動物を伏臥位にし、前腕を片手で保持し脇を締め挟みます。
小型犬の場合は前手が診察台から外に出るぐらいに保定しないと、採血場所を保持できません。
もう片方の手でマズルや下顎骨もしくはカラーの根元を保持し、頸部を伸展させます。この時、顔をあげた時に一緒に皮膚を引っ張り上げると駆血した血管が出にくい場合があるため注意が必要です。
また、血管が出にくい場合には左もしくは右に顔を少し動かしてあげることも必要です。

駆血は採血者が行います。

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【2】留置処置(前肢)の保定

橈側皮静脈留置

保定時と動物との位置関係

小型犬では保定者の前面と動物の後面が接する位置関係
大型犬では保定者の前面と動物の側面の位置関係

保定に必要なもの

エリザベスカラー、口輪、ヒッポカラー、駆血帯など

保定者

1人

ポイント

犬の肘の固定をうまく行い、親指もしくは人差し指で駆血を解除する。

(1)基本は犬座姿勢にします。小型犬で動きそうな子は伏座姿勢にして腕と体で挟み安定させます。犬の右手に入れる場合は保定者の左腕で頸部が動かないように下から保定します。この場合は、保定者の体と犬が離れないように注意が必要です。(A)
(2)犬の左手に入れる場合は、保定者の左手で犬の左ひじを固定します。そして、前に伸展させます。伸展させた手を動かさないように、親指もしくは人差し指以外の指で肘関節を固定します。そして親指や人差し指で駆血を行います。(B)

(3)駆血した血管に留置針が入り、内筒を抜いた後は血液が逆流しないように駆血を緩めます。ただし、駆血を緩めると肘が動きやすくなるため注意が必要です。その後、プラグを入れテープを巻き終わるまで駆血を緩め保定を行う必要があります。(C)

基本はどの犬種も変わりません。

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【3】超音波検査(心臓、腹部)の保定

心臓検査を行う場合

保定に必要なもの

心臓検査エコー台、エリザベスカラーなど

保定者

1人もしくは2人

ポイント

犬の心臓は脇の下の位置にあるため、なるべく前肢を前に伸ばします。

(1)診察台の上にエコー台をのせて、台とエコー台が動かないようにする。
(2)犬をまずは右横臥位にし、保定者の右手で犬の前肢を2本共保定します。(A)

この時、犬の足と足の間に指を入れて保定します。後ろ足も同様に。挟むことで保定の強度が増します。(B)

(3)犬の脇の下の部分でエコーを行うため、なるべく犬の前手は前に伸ばします。保定者の肘もしくは腕で犬の顔が動かないように頸部を固定します。(C)

(4)動いてしまう場合や犬が大きい場合は、前と後ろを保定する人が必要です。その際は、片手づつで1本の手足を保定します。(D)

腹部エコー

保定に必要なもの

クッション、エリザベスカラーなど

保定者

1人もしくは2人

ポイント

下が柔らかい方が安定し、犬も嫌がらないためクッションなどを使用すると良い。また、仰臥位の場合はどうしても顔がフリーになるため、動かれてしまう場合は保定者の追加が必要です。犬の足と足の間には保定者の指を入れて保定しましょう。

(1)診察台の上にクッションを引き、台とクッションが動かないように固定する。
(2)犬を仰臥位、お腹の中心を真上に向けるように前肢2本を保定者の右手で保定し、左手で後ろ足2本を保定します。通常は最初、検査する人の左側に犬の顔を向ける保定から始まります。(A)

この際も、心臓の検査と同様に犬の腕の間に指を入れます。(B)

(3)横臥位もまず保定者の右側に犬の頭が来るようにします。動く場合は後ろ足をもう1人の保定者で保定します。(C)

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【4】レントゲン検査(胸腹部)の保定

保定者

2人

ポイント

撮影したい部位を中心に持って行き、保定者の手が映らないように注意する。

胸腹部のVD:
犬の前手と後ろ足を伸ばし、左右均等に撮れるように仰臥位を向かせる。

胸腹部のlate:
保定者の手が撮影されないように気をつけるのと、顔や手、足や尻尾など動きやすい部分をしっかりと固定する。手などが写ってしまう場合は防護手袋などをしっかりする。

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【5】眼検査の保定

ポイント

頸を保定してしまうと眼圧などが上がる恐れがあるため、下顎骨と頭を押さえる。

(1)犬座姿勢に座らせます。

(2)犬の背中を保定者側にし、顔を前に突き出します。
この時は顔が動かないように片方の手で顎を、片方の手で頭を抑えます。首の柔らかい部分はなるべく触らないようにします。

目の検査の時は少しでも動くと検査が非常にしづらくなるので、動かないように注意しましょう。

【6】処置時(耳6 掃除、皮下注射、爪切り、肛門嚢絞り)の保定

耳掃除
ポイント

頭を動かさないように頸もしくは口などを抑え込む。

(1)できれば犬座姿勢にします。

(2)あまり動かないような子であれば口と頭を抑えるやり方が良いです。

◎保定を嫌がる犬の場合
片方の手で前肢を挟み抑えます。(A)

もう片方の手で口を抑え、耳を出します。この場合、保定者と犬の体を密着させて隙間を作らないようにします。(B)
あまりに頭が動いてしまう場合は写真Cのように頸の部分を固定しますが、耳掃除はやりにくいです。

あまりに嫌がる子はエリザベスカラーを使用し抑えると良いでしょう。

◎大型犬の場合
頸を固定し、顔が動かないようにします。

(3)もっとも安定した保定法は片方で口を抑え混み、もう片方の手で前足を挟み持ちして、その肘で体を挟み混み密着させます。

◎大型犬の場合
1人で抑え込む場合は体を密着させ、顔が動かないようにします。

皮下注射
ポイント

頭を確実に固定することが重要。

◎小型犬の場合
皮下注射をする場合はほとんどが頸背部付近に摂取します。その部分を露出させるためには顔を押さえ込み、体を安定させます。

爪切り
ポイント

頭がフリーになると動く可能性が出てくるので、体と腕で挟み込むことが重要。

◎1人で爪切りする場合
保定者の利き腕で爪切りを扱うため、利き腕ではない腕と体で犬の頸を挟み込み、爪を切ります。

◎保定者と爪切りをする人がいる(前側)場合
前肢:
犬座姿勢にし、体が動かないように保定者と密着させ顔は手で保定。前手を前に出す。(A)

嫌がる場合は写真のように保定者の腕で犬の頸を保定。(B)

後肢:
肝心なのは体が動かないこと。嫌がる子は噛み付くので顔を腕で固定。

肛門線絞り

(1)基本は爪切りの後ろ足と同じで、顔を固定。

(2)その後、保定者の右手は空いているので尻尾を上にあげ、別の人が絞る。その際に、犬の後ろ足を2本とも頭側へ引っ張ることで絞りやすくなる。

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