皮膚治療の一連の流れからスキンケア製品の選択方法

Vet Derm Tokyo 代表皮膚科医
アジア獣医皮膚科専門医
獣医師 伊從 慶太

小動物の皮膚疾患の管理において、スキンケア製品は重要な治療オプションとなる。シャンプー剤による皮膚や被毛の洗浄は広く普及しているが、近年、溶剤型洗浄剤、コンディショニング剤、その他の外用剤など様々なタイプのスキンケア製品が利用可能である。スキンケア製品を選択する際には、それぞれの製品の効能と適応、製剤の特性を理解することが極めて重要である。

【1】スキンケア製品の区分

シャンプー

基本的には水と界面活性剤から構成され、保湿剤、コンディショニング剤、薬剤、防腐剤、色素、香料などが含まれる。シャンプー剤を選択する際には薬用成分や保湿成分が注目される傾向にあるが、主成分である界面活性剤の区分と特性を理解することが重要である。
製剤の表記上『低刺激』と表記されていても、洗浄力の高い界面活性剤が含有されていることもあるため、各シャンプー製剤に含まれる成分は詳細に確認する必要がある。

溶剤型洗浄剤

シャンプーのような界面活性剤型洗浄剤と異なり、洗浄時に水を必要としない洗浄剤である。
皮膚の皮脂汚れになじむことで洗浄効果を発揮する製剤であり、クレンジングオイル、クレンジングジェルやクリームが代表である。
適応後には拭き取りにより洗浄剤を除去するか、界面活性剤型洗浄剤と組み合わせたダブル洗浄を実施することで効率的に皮脂汚れを除去可能である。

コンディショニング剤

皮膚や被毛の保護・修復、被毛の摩擦軽減を目的とした製剤である。
シャンプー剤などの洗浄は皮膚の汚れを落とすことを目的とするが、皮膚に必要な皮脂や脂質を過剰に落とすことで皮膚バリアを傷害するリスクを伴う。したがって、洗浄処置を行った後は、適切なコンディショニング剤で皮膚や被毛を整える必要がある。

洗浄剤やコンディショニング剤以外の外用剤

洗浄剤やコンディショニング剤以外にも、様々なバリエーションの外用剤が利用可能である。外用剤を選択する際のポイントは効能と適応以外に、外用剤の基剤に着目する必要がある。動物用スキンケア外用剤の基剤としてはクリーム、ゲル、ソリューション、スプレー剤、スポット剤などが挙げられる。
適応する部位や適応のコンプライアンスなど症例と飼い主に併せて基剤を選択することが必要である。

【2】スキンケア製品の効能と区分について

問題行動には大きく分けて下記の2つがある。

日常的に遭遇しやすい犬や猫の皮膚・被毛のトラブルとしては、乾燥肌、皮膚炎、脂性肌、細菌や真菌の増殖、多汗が挙げられる。
シグナルメント、視診、触診、各種皮膚検査から皮膚トラブルを判定し、効果の期待できる製剤を選択する。同様の効能を期待できる製剤は複数存在するが、それぞれの製剤に含まれる有効成分は異なることが一般的である。例えば、次ページの表では保湿をコンセプトにした製品が複数あるが、それぞれに含まれる成分は様々であり、保湿+αの効果を期待できる製剤も存在する。各成分がどのような機序で効能を発揮するかを理解することが重要である。

ポイント

同じコンセプトを持つ複数の製剤から単一の製剤を選択する際に迷いが生じる場合は、候補となる製剤を部分的に使用して(四肢を一つずつ別の製剤で洗うなど)、使用後の皮膚状態を比較することも重要である。

一方、製剤を実際に使用し、効果を評価するのは症例の飼い主であり、泡立ちや香り、煩雑性などの使用感によって選択される製剤が大きく異なることも少なくない。したがって、製剤の区分についても正しい知識を持つこと、飼い主に勧める製剤は自身の使用経験があることが重要であり、それぞれの症例と飼い主のライフスタイルにあった製剤をオーダーメイド感覚で提案することを意識しなければならない。

コンディショニング剤

皮膚からの水分蒸散量が増加し、角層の水分量や脂質量が低下した状態が乾燥肌である。
臨床的には皮膚に乾燥した鱗屑が付着し、皮膚のハリや被毛の光沢が低下する。このような肌質には、セラミド関連物質、脂肪酸、天然保湿因子、リピジュア、ヒアルロン酸、ヘパリン誘導体、キチン、コンドロイチン硫酸、尿素、乳酸、アミノ酸などの保湿成分が有効である。
犬のアトピー性皮膚炎では、皮膚セラミド量の低下による皮膚のバリア機能障害の可能性が報告されているため、セラミド関連物質を配合した製剤が多数存在する。

抗炎症(皮膚炎)

外傷、接触物、感染体、アレルギー反応などをはじめ、様々な原因により皮膚炎は生じる。
臨床的には紅斑が認められることが多く、浮腫や熱感、掻痒を伴うこともある。
抗炎症・止痒成分としてはオートミール、オーツ関連物質、アロエベラ、グルチルリチン酸ジカリウムなどが挙げられる。

抗脂漏(脂性肌)

皮脂が過剰分泌された状態あるいは皮脂バランスに異常が生じた状態が脂性肌である。シー・ズー、コッカー・スパニエル、ウエストハイランド・ホワイト・テリアなどで脂性肌を認めやすい犬種が存在する。
臨床的には皮膚表面のベタつきと過剰な鱗屑を認め、常在菌の増殖による皮膚炎や掻痒、皮膚の肥厚をともないやすい。
抗脂漏成分としては、クレンジングオイル、イオウ、乳酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸などが挙げられる。
重度の脂性肌では、過酸化ベンゾイル、二流化セレン、コールタールなどが用いられることもあるが、皮膚や被毛の負担も考慮しなければならない。

抗菌(感染性皮膚疾患)

小動物皮膚科臨床においては細菌あるいは真菌の皮膚感染に起因する皮膚トラブルに高率に遭遇する。特に、犬においては皮膚常在菌であるブドウ球菌の増殖(膿皮症)や酵母様真菌の増殖(マラセチア皮膚炎)が頻発する。
臨床的には紅斑、丘疹、膿疱、黄色の鱗屑や痂皮を認めやすい。抗菌成分としてはクロルヘキシジン、クロルキシレノール、乳酸エチルが一般的である。その他過酸化ベンゾイルやポピドンヨードが用いられるが、これらの成分は皮膚への刺激性に配慮しなければならない。また、ティーツリーオイル、ヒノキチオール、単糖類にはマイルドな抗菌効果が期待できる。
酵母用真菌に対しては、ミコナゾール、ケトコナゾールなどの抗真菌成分、高濃度クロルヘキシジンが汎用される。これらの感染体が増殖する背景には、乾燥肌、脂性肌、多汗などの皮膚トラブルが存在する場合が多い、抗菌成分で感染体を除去する際には、その背景にある皮膚トラブルに対してのスキンケアを合わせて行うことが重要である。

pH の調整(多汗)

汗腺からの分泌が過剰な状態が多汗であり、多汗の皮膚においては皮膚表面のpHがアルカリ側に傾く。
したがって、細菌感染(特に常在菌であるブドウ球菌の増殖)を助長しやすい。
多汗はヨークシャー・テリアで好発する傾向にあり、臨床的には被毛のベタつきや丘疹、掻痒を認める。
皮膚pHを酸性に傾ける成分としては乳酸エチルが汎用され、同成分は抗菌効果も発揮する。その他、炭酸泉など弱酸性のソリューションも皮膚pHの調整に有効である。

美容・一般

皮膚や被毛にトラブルがない場合においてもスキンケアは重要である。正常な皮膚や被毛においてもスキンケアを積極的に実施することで、健康で生き生きとした皮膚を維持し、皮膚疾患を予防することが期待できる。
スキンケアの方法としては皮膚・被毛の洗浄と保湿を基本とし、その他皮膚の保護や賦活、栄養管理、ライフスタイルやストレスケアなどを組み合わせる。トラブルのない皮膚や被毛において選択可能な製剤の幅は広いため、美容上の目的や飼い主の嗜好に併せて調整するが、季節や年齢ごとに調整することも重要である。

期待できる効果 製剤区分 商品名 メーカー名 ページ
保湿 シャンプー コートハンドラー15:1再純化シャンプー SENPROCO 商品ページ
ヒノケア かさかさ肌用(オススメ) バイエル薬品 商品ページ
N's drive homeスキンシャンプー グラッド・ユー 商品ページ
N's drive スキンシャンプー グラッド・ユー 商品ページ
AFLOAT DOG VETシリーズ 低刺激 シャンプー ペティエンスメディカル 商品ページ
セボダーム ビルバックジャパン 商品ページ
花王ヘルスラボシャンプー(オススメ) 花王(シグニ専売品) 商品ページ
スキンケア 敏感肌用ボディーソープ 泡ポンプ イーペットケア 商品ページ
コンディショニング剤 コートハンドラー15:1 コンディショナー SENPROCO 商品ページ
N's drive homeスキンバリア グラッド・ユー 商品ページ
N's drive スキンバリア グラッド・ユー 商品ページ
N's drive スポットバリア グラッド・ユー 商品ページ
AFLOAT DOG VETシリーズ 低刺激 モイスチャライズ(オススメ) ペティエンスメディカル 商品ページ
ヒュミラック(オススメ) ビルバックジャパン 商品ページ
スキンケア 敏感肌用バリア&モイスト ボトルタイプ イーペットケア 商品ページ
高濃度セラミドモイスチャースプレー(オススメ) ペティエンスメディカル 商品ページ
外用剤(スポット剤) ダーム-ワン(オススメ) ビルバックジャパン 商品ページ
ベッツ ダーマ ケアスプレー(オススメ) ペティエンスメディカル 商品ページ
高濃度セラミドフットクリーム ペティエンスメディカル 商品ページ
外用剤 こんにゃくセラミドスプレー ミネルヴァコーポレーション 商品ページ
シャンメシャン ナチュラルスキンケアクリーム キタガワ 商品ページ
VBGスキンジェル アリスタヘルスアンドニュートリションサイエンス 商品ページ
高濃度セラミドボディジェル ペティエンスメディカル 商品ページ
保湿・抗炎症 シャンプー John Paul Pet オートミールシャンプー JOHN PAUL PET(アメリカ) 商品ページ
マスマリン ハーブシャンプー アライアンス 商品ページ
Darmcare アロビーンシャンプー キリカン洋行 商品ページ
EFAスキンコントロールシャンプー(オススメ) キリカン洋行 商品ページ
A.P.D.C.ティーツリーシャンプー たかくら新産業 商品ページ
MOO オーガニックシャンプー たかくら新産業 商品ページ
アデルミル(オススメ) ビルバックジャパン 商品ページ
エピスース(オススメ) ビルバックジャパン 商品ページ
ザイマックス 皮膚科学シリーズ シャンプー PKBジャパン 商品ページ
コンディショニング剤 John Paul Pet オートミールリンス JOHN PAUL PET(アメリカ) 商品ページ
Darmcare アロビーンコンディショナー キリカン洋行 商品ページ
EFAスキンコントロールコンディショナー(オススメ) キリカン洋行 商品ページ
A.P.D.C. ティーツリーコンディショナー たかくら新産業 商品ページ
MOO オーガニックコンディショナー たかくら新産業 商品ページ
外用剤(スポット剤) Jデルモセント エッセンシャル6スポットオン(オススメ) 共立商会 商品ページ
外用剤 デルモセント アトップ7スプレープラス 共立商会 商品ページ
ザイマックス 皮膚科学シリーズ クリーム PKBジャパン 商品ページ
ザイマックス 皮膚科学シリーズ スプレー PKBジャパン 商品ページ
保湿・脂漏 シャンプー ヒノケア べたつき肌用(オススメ) バイエル薬品 商品ページ
脂漏 シャンプー ゾイック スーパークレンジング(オススメ) ハートランド 商品ページ
カニマールワン フジタ製薬 商品ページ
薬用サルファ・サリチル酸シャンプー フジタ製薬 商品ページ
ケラトラックス(オススメ) ビルバックジャパン 商品ページ
AFLOAT DOG レギュラーシリーズ 下洗いシャンプー(オススメ) ペティエンスメディカル 商品ページ
溶剤型洗浄剤 N's drive スキンクリーニングオイル グラッド・ユー 商品ページ
AFLOAT DOG VETシリーズ 低刺激 クレンジングオイル ペティエンスメディカル 商品ページ
スキンケア オイリースキン用クレンジングオイル イーペットケア 商品ページ
脂漏・抗菌 シャンプー ビルバゾイル ビルバックジャパン 商品ページ
VET Solutions BPO-3 シャンプー 共立製薬 商品ページ
VET Solutions ユニバーサルメディケートシャンプー 共立製薬 商品ページ
セボゾールシャンプー 共立製薬 商品ページ
コラージュフルフルネクスト シャンプー うるおいなめらか(オススメ) 持田ヘルスケア 商品ページ
コラージュフルフルネクスト シャンプー すっきりさらさら(オススメ) 持田ヘルスケア 商品ページ
抗菌 シャンプー ゾイック 薬用シリーズ ハートランド 商品ページ
薬用ヨードシャンプー 200mL フジタ製薬 商品ページ
薬用酢酸クロルヘキシジンシャンプー フジタ製薬 商品ページ
ノルバサンシャンプー0.5(オススメ) キリカン洋行 商品ページ
マラセブ(オススメ) キリカン洋行 商品ページ
多汗・抗菌 シャンプー エチダン ビルバックジャパン 商品ページ
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