学術コラム

薬用シャンプーを効果的に使いこなそう!
〜薬用シャンプーの選択と使用方法〜

  • 帝京科学大学 動物皮膚科学研究室
    准教授 関口 麻衣子

撮影協力:帝京科学大学アニマルケアセンター(東京都足立区)

A:その子の皮膚症状に合った薬用シャンプーを選択できたら、次に大切なポイントは薬用シャンプーのやり方になります。

薬用シャンプーのやり方は、その動物の大きさ、毛質、性格、皮膚症状、シャンプーの種類、あるいは動物病院の先生の考え方によって、必ずしも同じとは言えませんが、次のような方法が推奨されると思います。

まず皮膚表面である角質層(肌)に水をたっぷりと含ませる目的で、全身の皮膚表面を30℃以下の水で約5 分間かけて良く濡らし続けます(写真9、10)。

次に、水分をたっぷり含んだ角質層に薬用シャンプーの成分をしっかり作用させる目的で、スポンジ等で硬く泡立てたシャンプーを皮膚表面に付着させ、約10分間おきます(写真11、12)。

最後に皮膚表面に残っている余分なシャンプー成分をしっかりと落とす目的で、やはり30℃以下の水で約5 分間かけて良く洗い流します(写真13、14)

薬用シャンプーのやり方

1.角質層に水を含ませる
30℃以下の水で全身の肌を良く濡らす(5分間)
2.角質層に成分を作用させる
しっかり泡立てたシャンプーをこすらずマッサージするように全身の肌に付着させる(10分間)
3.角質層から余分な成分を除く
30℃以下の水で全身の肌を良く洗い流す(5分間)

A:薬用シャンプーは、一度の使用で十分な効果が出るとは言えません。一般的に、薬用シャンプーの効果をみるための頻度は週2 回、期間は少なくとも2 週間後から効果を判断します。
さらに症状の改善に合わせてさらに頻度を減らしていき、改善後はできるだけ低刺激のシャンプーによる維持を試みます。

A:薬用シャンプーは、「その子に合ったシャンプー」ではなく、あくまでも「その皮膚トラブルに合ったシャンプー」でなければなりません。よって、その子の皮膚トラブル、あるいは肌質の変化に合わせて薬用シャンプーも常に見直さなければならないものです。特に角質溶解性シャンプーや抗菌性シャンプーは、薬用シャンプーの中では刺激性のあるシャンプーに属するものです。これらのシャンプーによって効果がみられたとしても、同じシャンプーを同じ頻度で使用し続けて良いとは限りません。皮膚トラブルが改善しているのに、刺激性のあるシャンプーを続けていた場合、新たな皮膚トラブルを招いてしまう可能性もあるのです。薬用シャンプーで改善がみられても、使用しているシャンプーが刺激性のあるシャンプーだった場合は、まず頻度を減らすこと、さらに刺激の少ない保湿性シャンプーなどに切り替えていくことが推奨されます。皮膚トラブルが一時的なもの、あるいは季節性のものだった場合には、薬用シャンプー自体を中止してみることを考えても良いと思います。

薬用シャンプーの見直し

1.角質溶解性シャンプーや抗菌性シャンプーは、皮膚トラブルの改善に合わせて頻度を減らす。
2.皮膚トラブルが改善後の皮膚は、できるだけ刺激の少ないシャンプー(保湿性シャンプーなど)で維持する。

A:薬用シャンプーの中で、角質溶解性シャンプーに属するシャンプーの多くは、使用後に皮膚表面が乾燥しやすいものですので、作用の強い角質溶解性シャンプーを使用後には、コンディショナーやローション(表5)を併用することで皮膚表面が過剰な乾燥や刺激を受けることを予防できると考えられます。
さらにコンディショナーやローションの多くは、水で洗い流すことなく、皮膚表面に吹きつける(塗りつける)ことができるため、日ごろから肌の乾燥が目立つ子の場合(写真15、16)は、日常的に乾燥部位に使用することができます。特にセラミドやこれに関連した物質を含んでいるコンディショナーやローションは、構造に問題のある角質層(肌)の修復が期待できるものとして注目されています。

主な皮膚トラブルと肌質

■表5:脱毛している、あるいは疎毛な肌、乾燥肌、敏感肌

( 左:写真15 )掻き壊しによる疎毛(側腹部)→アトピー
( 右:写真16 )非炎症性脱毛、乾燥(側腹部)→淡色被毛脱毛症

主な適応
アトピー、脱毛症、あるいはシャンプー後の刺激を受けやすい肌など(保護、保湿、角質修復を期待)

皮膚トラブルに対する 薬用シャンプーの分類 主に動物病院で 処方されている製品 販売元 皮膚への効果が期待される主な成分 用途 備考 商品
コンディショナー/ローションなど ヒュミラック ビルバックジャパン 尿素、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール コンディショナー/ローション 洗い流さない(シャンプー後、あるいは日常的に使用)
エピスース スキンスプレー コロイド状オートミール、 P1003 プロピレングリコール、グリセリン
オーツコンディショナー 日本全薬工業 オーツアベナンスラマイド 取扱なし
デュクソスプレー フィトスフィンゴシン0.2%
ザイマックス スキンスプレー PKB ジャパン ラクトペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、リゾチーム
Dermcare アロビーンコンディショナーキリカン洋行 オートミール抽出物、アロエベラ 洗い流しても、洗い流さなくても良い
N's drive スキンバリア アンフィニプロジェクト ヒアルロン酸Na、セラミド類(セラミド1・2・3、フィトスフィンゴシン) 洗い流さない(シャンプー後、あるいは日常的に使用)
VET Solutions アロエ&オートミール スキン&コート コンディショナー 共立製薬 アロエベラジェル、グリセリン、オートミール、乳酸、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、コレカルシフェロール 取扱なし

写真協力:よしむら動物病院(埼玉県鳩ケ谷市) 稲川動物病院(茨城県下妻市)


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