はじめに

健康寿命をいかに伸ばすか?は、長寿国である日本の大きな課題です。昨今、肥満や糖尿病をはじめとした生活習慣病と、腎臓病、がん、認知症などの疾患が複雑に絡み合いあい、健康長寿を阻害しています。そのため、医療技術だけではなく、栄養管理や生活習慣の改善など、健康生活全般に対する早期介入「予防医療」のアプローチが大切になりました。さらに現在は、一般的な患者を想定してデザインされた集団に対する予防医療から、より個人の特徴に応じて精密に介入を行う「先制医療」の研究が加速度的に進んできています。

このような社会的背景をもとに、ペットの健康長寿に対して、より精密で先制的な医療の提供とその研究を、各分野を超えて横断的に取り組む研究会を設立することにいたしました。
そして研究会設立に先立ち、生活習慣の根本である栄養管理に焦点を当て、特別講演会を開催いたします。

講師は、米国の獣医栄養学専門医のトップランナーであるDr.Sean Delaneyをお招きして、学術的観点および100万症例に上る臨床経験から「肥満栄養管理」と「家庭・手作り食の落とし穴」についてご講演いただきます。また、米国での臨床経験が長く、市場の動向にも詳しい岡田ゆう紀先生には、最新の米国フード事情とともに、ペットフードの表示の読み方やナチュラルとオーガニックフードの違いなど、「今さら聞けないペットフードのあれこれ」をご講演いただきます。

先制動物医療研究会
会長  新井 敏郎

 
 

講演会日程

日時   4月16日(日)10:00〜16:00
会場   東京国際フォーラム (ホールD7)       アクセス▶   MAP▶
参加費  

・講演会
獣医師:8,000円 / 動物看護師・学生:4,000円
上記以外:8,000円

・懇親会 (Sean Delaney先生との交流会)
会費制:6,000円(16:30-18:30 会場:レバンテ http://www.okr-j.co.jp/

お申込みフォーム送信後、上記の金額を下記へお振込みをお願いいたします。
みずほ銀行 錦糸町支店(店番号:322) 普通 2112647 先制動物医療研究会

プログラム

先制動物医療研究会 設立にあたり

「新しい動物医療システムの構築」

わが国は、今まさに人類史上初めての超高齢社会の入り口に立っている。2025年には団塊世代がすべて75歳以上となるため国民の5人に1人が後期高齢者という人口構成となり、加齢に伴う種々の疾病が増加し、医療費、年金、介護費用を合わせると毎年200兆円を超える負担が国民に課せられると予想される(2025年問題)。犬や猫でも寿命延伸により人の後期高齢者に相当する15歳を超える動物が著しく増え、人で問題となっている2025年問題が獣医領域では既に始まっている状況と考えられる。人医療ではこの問題に対し、疾病の早期診断、早期介入により医療費の増大を抑える可能性があるとして「先制医療」という概念が普及している。先制動物医療は、単に新たなバイオマーカーを使って、これまでより早期に動物の疾病診断をするだけの獣医療ではない。動物個々の体質や生活環境から疾病の発症を予測し、定期的な観察から早期に的確な診断を実施、発症抑制、重症化予防に繋げる「個に対する積極的な疾病予防」を行うもので、精密医療、テーラーメード医療を意図する新たな動物医療システムである。

予防というとワクチンを連想される方が多いと思われる。感染症に関してワクチンは最も有効な予防法といえるが、21世紀に入り人の疾病構成が変わり、感染症に代わって肥満、糖尿病、高血圧、心疾患など非感染性疾患 (non-communicable disease, NCD) の治療費が感染性疾患を上回るようになり、さらにこの金額は、加齢とともに増大が予想されることから2025年問題が誘引されると考えられている。NCDの発生には生活習慣、特に食生活との関わりが強く示唆される。肥満はNCDの多くのリスクファクターとなることから、肥満の抑制は先制医療でも特に重要項目とされる。現在、犬や猫でも加齢に伴い肥満が著しく増え、これに伴う代謝性疾患の発症も増えている。特に猫はその代謝特性から犬に比べ肥満しやすく、肥満に伴いインスリン抵抗性、2型糖尿病の発症などが増えることがよく知られている。我々は、猫肥満の判定基準を新たに作成し、これをもとに新たな治療戦略の策定を目指している。猫肥満をモデルに先制動物医療のアイデアを示したい。 地球という同じ環境で暮らす人と動物、その疾病の発症に関しては共通のメカニズムも数多い。先制動物医療は動物の健康を担保するのに不可欠な新しい動物医療システムである。同時に、そこで生み出される知見は人医療にとっても非常に有用である。先制動物医療は、世界的な科学の潮流となりつつあるOne Health研究(2016 One Health 福岡宣言)の一領域と位置付けられ、「人と動物がともに健康で安全に長生きできる社会の構築」に大いに貢献するものと確信する。

講師:新井 敏郎 先生

日本獣医生命科学大学 獣医学部教授(獣医生化学)、大学院研究科長
1986年 日本獣医生命科学大学大学院博士課程修了(獣医学博士)
1986年 日本獣医生命科学大学 獣医学部助手
1989年 ミシガン大学医学部博士研究員 (Dept Human Genetics)
2006年 日本獣医生命科学大学 獣医学部教授
2010年 日本獣医生命科学大学 獣医学部長
2016年 日本獣医生命科学大学 大学院研究科長

日本医科大学評議員、日本獣医学会評議員、日本獣医臨床病理学会会長
ISACP Vise President 他

新井 敏郎 先生


特別講演1

「今さら聞けないペットフードのあれこれ」
「ペットフードラベルを解読せよ!」〜米国においてのペットフード事情から学ぶ獣医師の責任〜

1860年に誕生したペットフード産業は、その後経済・産業構造、ライフスタイルの変化に合わせて、目まぐるしいスピードで成長・変化してきた。米国においてペットフードは270億ドル(2016)を産み出すメガ市場であり、ヒトのベビーフード市場より顕著に高い。成熟したマーケットでの止むなき成長は、更なる進化を生み出し、隙間市場の開発や、ヒトの食品産業による買収・参入、また世相を反映する巧みな販売戦略も目立つ様になった。
2007年に起こったペットフードメラミン混入事件をきっかけに、飼主の市販フードに対する不信感が増し、原材料・作成行程や保存方法などにも関心が寄せられるようになった。しかしながら、ペット栄養・臨床栄養学教育の発展、ペットフード規制の実態は、ペット大国・アメリカにおいても世の中の流れと大きな隔たりがある。
飼主が望む『最良のフード』とは何か?解答することが難しくなってきた今だからこそ、獣医師がペットフード産業の歴史・傾向・規制(米国)の実態を把握し、飼主の誤解や幻想を解決し、飼主のニーズに合ったフードを推奨することが重要である。ペットフードラベル(製品表示)はフードを評価するためのある一定の有用な情報を提供する、と同時にマーケティングツールとなっている事も理解する必要がある。

本講演では『ペットフードラベルの解読方法』を紐解いていく。第一に、近年のペットフードラベルでみられる『バズワード』、『オーガニック』や『ナチュラル』などの定義や誤解についても言及したい。第二に、ラベルから分かるペットフードの評価・比較方法、マーケティングツールとなり得る事項を提示する。最後にペットフード・会社を評価する上で挙げるべき重要な質問もご紹介する。 なお、日本国内で流通するペットフードの表示は「ペットフード安全法」と「公正競争規約」によって定められている。この内、後者が定める表示事項がより詳細なものであり、それを制定するペットフード公正取引協議会が、AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準を採用しているため、本講演では米国における傾向・基準について言及したい。

講師:岡田 ゆう紀 先生

学歴:
2000年 Bachelor of Arts (Integrative Biology), University of California at Berkeley
2005年 Doctor of Veterinary Medicine, College of Veterinary Medicine, Michigan State University
2017年 日本獣医生命科学大学大学院(獣医学博士)
経歴:
2005年 Associate Veterinarian, Miracle Mile Veterinary Hospital
2011年 Associate Veterinarian, East San Rafael Veterinary Hospital
2013年 日本獣医生命科学大学 助教
賞罰:
Eitan Bogin Prize (ISACP) 、優秀発表賞(獣医生命科学会)、Phi Beta Delta (Michigan State U) ジャーナル
Special topic editor, Frontiers in Veterinary Science
共著書:
臨床のための小動物栄養学(ファームプレス)

岡田 ゆう紀 先生


特別講演2

「困ってませんか?ペットの肥満の栄養管理」
「ペットの家庭食/手作り食の落とし穴」

Sean Delaney先生は、これまでに獣医臨床栄養学専門医として15年以上にわたり世界各地で健康な動物、病気に罹患した動物のために100万種類以上の手作り食のレシピを作成してきた臨床栄養学の第一人者です。
本講演では、過体重、肥満を呈するペットが世界的に著増している現状で、その正しい見分け方、さらに体重増加がペットに与えるリスクについて詳細に説明いただきます。余分な脂肪蓄積が寿命を短くするなどの悪影響を及ぼすことをいかに正しく飼い主に伝えるか、また個々の動物の必要なエネルギー量の簡便な算出方法を説明し、臨床栄養学の重要性を解説いただきます。肥満のリスクを回避し、安全に減量するプランの組み立て方やその管理調整方法、さらに減量に関する誤った理解や種々の課題に関しても紹介いただきます。 また、手作り食を作るための詳細な方法だけでなく、手作り食の問題点についての解説もいただきます。健康なペットの飼い主が何故、手作り食を求めるのか、いっぽうで、病気の動物にとって手作り食はどのような有用な効果を持つかなどについて説明いただきます。さらに一般の臨床現場において、手作り食をどのように活用すべきか、それに付随する諸課題に関して、具体的な症例を挙げて説明いただきます。

(Sean Delaney先生ご講演に向けて 先制動物医療研究会会長 新井敏郎)

「Nutritional Management of Canine & Feline Obesity」
Dr. Delaney will discuss how to identify patients that are overweight or obese as well as at risk of gaining undesired weight. The lecture will discuss how to educate clients about the impact of extra weight on lifespan and how to assess unique energy needs. The development of a weight loss plan along with needed monitoring and adjustment will be covered to enhance success. Common challenges and issues will also be addressed.

「Homemade Dog & Cat Food - Why, When & How 」 ‐Experience From Millions‐
Dr. Delaney will discuss homemade diets based on his over a decade and a half of specialty experience formulating millions of recipes for both healthy and sick pets around the globe. The lecture will cover the reasons homemade diets are chosen by clients with healthy pets and when homemade diets can benefit sick patients. How to formulate homemade diets in general practice, common challenges seen with this feeding approach, and how to solve them will be covered.

講師:Dr. Sean Delaney

学歴:
Bachelor of Science (Zoology), UC Santa Barbara
Master of Science (Nutrition), UC Davis
Doctor of Veterinary Medicine, UC Davis School of Veterinary Medicine
2003年 Diplomate of the American College of Veterinary Nutrition, UC Davis School of Veterinary Medicine
経歴:
2003-2013年 UC Davis 獣医大学病院 臨床栄養科 臨床教員
2003年 犬・猫栄養コンサルタント会社(DVM Consulting)設立
2003年 手作り食用レシピサービス会社(BalanceIT) 設立
2007-2011年 Natura Pet Food 副社長・研究開発部長
現在  BalanceIt 社長
賞罰:
Max Kleiber Prize, UC Davis大学院修士課程(栄養学)
学会などの役員:
The American College of Veterinary Nutrition, 理事
著書・監修本:
Applied Veterinary Clinical Nutrition(Wiley)

Dr. Sean Delaney


10:00- 開 場  
10:30-11:00

先制動物医療研究会 設立にあたり

「新しい動物医療システムの構築」

講師:新井 敏郎 先生
先制動物医療研究会会長

新井 敏郎 先生

講演概要・略歴

11:00-12:00

特別講演1

今さら聞けないペットフードのあれこれ
「ペットフードラベルを解読せよ!」
〜米国においてのペットフード事情から学ぶ獣医師の責任〜

講師:岡田 ゆう紀 先生
日本獣医生命科学大学助教 


講演概要・略歴

12:00-13:00 休 憩  
13:00-16:00 特別講演2

1.「Nutritional Management of Canine & Feline Obesity」
 困ってませんか?ペットの肥満の栄養管理
2.「Homemade Dog & Cat Food – Why, When & How」
– Experience From Millions – 世界初公開

 ペットの家庭食/手作り食の落とし穴 – 100万症例の経験より

講師:Dr. Sean Delaney, DVM, MS, DACVN
Diplomate of the American College of Veterinary Nutrition
BalanceIT/DVM Consulting


講演概要・略歴

16:30-18:30 懇親会(会費制・参加希望者のみ)
Sean Delaney先生をお招きして 会場:レバンテ
 

主催・協賛

主 催   先制動物医療研究会
協 賛   ネスレ日本株式会社(ネスレピュリナペットケア)
株式会社ディライトクリエイション (docdog)
株式会社ファームプレス
シグニ株式会社
 

参加お申し込み

こちらからのお申し込みは4月12日(水)までとさせていただきます。
フォーム送信後、指定の銀行口座へ参加費のお支払を4月13日(木)までにお願いいたします。
ご入金確認後、お申し込み完了のお知らせをメールいたします。
(※ご入金後、1週間経ちましてもメールが届かない場合には、ご連絡ください。)

【お願い】
・公演当日の受付に、お申込み完了メールの画面もしくは出力した紙をご提示ください。


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お問い合わせ

講演会につきましてご不明な点や、参加費ご入金後、受付完了メールが届かない等の場合は、
下記までお気軽にお問い合わせください。

sensei@cygni.co.jp(件名に「先制動物医療研究会 講演会について」とご入力ください)

先制動物医療研究会 特別講演会事務局 シグニ株式会社