学術コラム

処置別の保定法

  • みずほ台動物病院
    動物看護士 小島哲也

■採血、耳掃除、強制給餌の3場面での保定について

【保定の心構え】
患者動物を安全に治療するにあたり、動物と施術者の安全を確保するためにも動物看護士の保定が必要不可欠です。そこで、今回は日常で多く遭遇する採血、耳掃除、強制給餌の保定について解説します。

【1】採血の保定

■犬の伏在静脈採決の保定

1.動物の首に腕を回します(写真1)。

2.もう片方の腕で動物の採決する肢の膝を持ち、後方に伸展させます(写真2)。

3.膝を持つ手の人差し指から小指で膝を持ち、肢を後方に伸展させる役割として使います。親指は駆血用として使います。動物が噛むことが予想される場合は、予めエリザベスカラーを装着することで咬傷事故を防止することが可能となりますが、ヒッポカラーを装着し動物の脇を抱えることでも咬傷事故を防止することができます(写真3)。

■犬の頸静脈採血の保定

1.動物を犬座姿勢にさせます(写真4)。

2.動物の下顎骨を視点に両手の指で顔を持ち上げます(写真5)。このときに、手首と腕で動物を横から挟みます。

3.動物が嫌がり前肢を動かす場合は、動物を伏臥位にし、前肢を片手で保持し脇を締めて体勢を安定させます。残りの手でマズルあるいは下顎骨を保持し、頸部を伸展させます(写真6)。

■犬の橈側皮静脈採血の保定
※留置針を使用した静脈留置の場合も同様の保定になります

1.動物の首の下から腕を回します(写真7)。

2.採血する前肢の肘を持ち、前方に伸展させます(写真8)。

3.小指から中指で上腕部の皮を持ち、人差し指と親指の付け根で肘を固定し、親指で駆血します。動物が噛むことが予想される場合は、予めエリザベスカラーを装着することで咬傷事故を防止することが可能となりますが、ヒッポカラーを装着し動物の脇を抱えることでも咬傷事故を防止することができます(写真9)。

■猫の内股静脈採血の保定

1.前肢と後肢を掴みます(写真10)。

2.動物を横向きに寝かせ、後肢の下側の肢を持ちます。上側の後肢は屈曲させ、足根関節部を保定者の手首で固定します(写真11)。

3.動物の肩を処置台と手首で挟んで固定します。下側の肢の膝を人差し指から小指で保持し伸展させ、親指で駆血します(写真12)。

※動物が噛むことが予想される場合は、予めエリザベスカラーを装着することで咬傷事故を防止することが可能となりますが、ヒッポカラーを装着し動物の両肘を保持しておくことでも咬傷事故を防止することができます。また、バスタオルを使用した保定も可能です。

バスタオルを使用した保定

1.前肢と後肢を掴みます(写真13)。

2.動物を横向きに寝かせ、後肢の下側の肢を持ちます。上側の後肢は屈曲させ、足根関節部を保定者の手首で固定します(写真14)。

3.動物の肩を処置台と手首で挟んで固定します。下側の肢の膝を人差し指から小指で保持し伸展させ、親指で駆血します(写真15)。

※動物が噛むことが予想される場合は、予めエリザベスカラーを装着することで咬傷事故を防止することが可能となりますが、ヒッポカラーを装着し動物の両肘を保持しておくことでも咬傷事故を防止することができます。また、バスタオルを使用した保定も可能です。

■猫の頸静脈採血の保定

1.片手で動物の頬骨を持ち、同時に逆の手で動物の両前肢を持ちます(写真16)。

2.その状態のまま処置台の端まで動物を移動させます(写真17)。

3.前肢が動かないように下方向に伸展させます。同時に顔を持ち上げ、腕と肘で動物の体を保定者に密着させます(写真18)。

※動物が嫌がり後肢が動く場合は、バスタオルで後躯を包み込むと効果的に保定することもできます。

■猫の橈側皮静脈採決の保定
※留置針を使用した静脈留置の場合も同様の保定になります

1.採血しない前肢側の腕(左前肢なら左手)で動物の首に腕を回します。

2.採血する前肢と同じ手で、採決する肢の肘を持ちます(写真19)。

3.採血する前肢を前方に伸展させます(写真20)。このとき、小指から中指で上腕部の皮を持ち、人差し指と親指の付け根で肘を固定し、親指で駆血します。

※動物が嫌がり後肢が動く場合、バスタオルで包むと効果的に保定することもできます。

バスタオルを使用した保定

1.動物をタオルの上に乗せ、採決する前肢をタオルの外にずらします(写真21)。

2.動物をタオルで包みます。このとき、まず採決する前肢側のタオルから包みます(写真22)。

3.続いて逆側のタオルで動物を包み込みます(写真23)。

4.片手で動物の首を保持し、もう片手で採血する前肢を伸展・駆血します(写真24)。

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【2】耳掃除・強制給餌の保定

■犬の耳掃除の保定

1.右腕で首を抱えます(写真25)。

2.左手を首の後ろにスライドさせ、親指を動物の頸背部に置き、頚部の動きを制限しにます(写真26)。

3.右上腕を耳の前方にスライドさせ、上腕部と前腕部で動物の顔を挟み左右に動かないようにします。この際に右手は頭頂部を撫でてあげます(写真26)。

■犬の強制給餌の保定

1.動物の首に手を回し、顔を保持します(写真27)。

2.顔を背けるなど強制給餌に協力的でない場合は、マズルを保持した状態で給餌します(写真28)。

※強制給餌を行う際には、誤嚥させないよう十分に注意しましょう。
※与える流動食は動物の状態によって異なります。衛生面からも使い回しせず、新しいカテーテルチップシリンジを使用するように習慣付けましょう。

■猫の強制給餌の保定

動物の首に手を回し、顔を保持します。逆の手で犬歯と前臼歯の隙間から給餌します。この時、保定者の両腕は動物の体を挟んで保持しています(写真29)。

※動物が嫌がり動く場合、バスタオルを使用した保定も効果的です。
※強制給餌を行う際には、誤嚥させないよう十分に注意しましょう。

バスタオルを使用した保定

1.後ろからバスタオルで前肢ごと包み込みます(写真30)。

2.片手で動物の首を持ち、もう片手で強制給餌用シリンジを持ち、犬歯と全臼歯の隙間から給餌します(写真31)。

※与える流動食は動物の状態によって異なります。衛生面からも使い回しせず、新しいカテーテルチップシリンジを使用するように習慣付けましょう。

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