眼科検査の基本とテクニック
- アニマルアイケア・東京動物眼科醫院 院長
獣医師 小林 義崇
眼科検査には比較的多くの種類の検査がある。正確に診断を進めていくためには、それぞれの検査の意義を理解し、正確な方法で実施していただくことが重要である。また眼科検査には一定の順序があり、病態によっては禁忌の検査もあることにも注意する。
【1】問診
ご家族が何を問題として来院しているのか、わかりやすい言葉で質問し、正確に把握する。ご家族は左右の眼を間違えていることも多いので、実際に眼を指し示しながら問診を行うと良い。また眼科疾患においては犬種、年齢、ヒストリーなどが重要な診断のヒントとなることが多いので、可能な限り聴取する。
【2】視診
眼球の左右対称性に着目して、眼脂の量や色、流涙、眼瞼痙攣、結膜充血の有無、眼球の動きや位置、瞬膜の位置などを注意深く観察する。
拡大鏡を用いるとかえって見落とすことも多いため、まず動物の真正面で腕の長さ程度の距離から観察をはじめ、徐々に近づいて詳細を観察していくとよい。
【3】威嚇瞬き反応
この検査で分かること | 視覚の有無(陰性の場合でも、必ずしも視覚が無いとは限らない点に注意) |
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手でたたくような威嚇刺激に対して、瞬きがおこるかどうかをみる。明条件・暗条件下でそれぞれ実施する。
威嚇瞬き反応の神経経路 | 視細胞 → 視神経(U) → 大脳視覚野 → 顔面神経(VII) |
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大脳皮質を介する経路であり、“反射”ではなく“反応”である点に注意する。そのためあまりに若齢(1-2ヶ月齢未満)では陽性反応がみられない。風による刺激や、睫毛や被毛に触れる刺激が偽陽性をひきおこすため、アクリル板などを用いても良い。
【4】光源を用いた徹照検査
この検査で分かること | 角膜の新生血管や色素沈着、虹彩の欠損や癒着、前房フレアーや出血、ぶどう膜嚢胞や腫瘤、白内障、無水晶体コーヌス、硝子体出血や変性、網膜剥離の有無などをある程度判断できる |
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患者から50cm程度離れて、トランスイルミネーターやエグザミネーションランプなどの光源を用いて光を眼軸に沿って眼に入射させる。それにより得られる眼底からの反射光を用い、眼球の透光体(角膜、前眼房、水晶体、硝子体)の混濁の有無を観察する。混濁がなければ瞳孔領内は一様に明るくなるが、混濁があればその部分が影に見える。
ウサギや極端に眼軸が離れている短頭種を除けば、犬や猫では両眼同時に徹照を得られるため、瞳孔径の左右差の有無も同時に確認することができる。
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【5】眩惑反射
この検査で分かること | 網膜や視神経、顔面神経の機能(陽性の場合でも、必ずしも視覚があるとは限らない点に注意) |
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トランスイルミネーターやエグザミネーションランプ、スリットランプなど高輝度の光源を、暗条件下で瞬時に眼に投射させ、瞬きがおこるかどうかをみる。後頭葉視覚野の興奮を介さずにおこる反射で、視神経(CN II)と顔面神経(CN VII)に依存する。
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【6】瞳孔対光反射
この検査で分かること | 網膜や視神経、動眼神経や虹彩の機能(陽性の場合でも視覚が無い場合や、陰性の場合でも視覚がある場合もあるという点に注意) |
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瞳孔対光反射は、眩惑反射と同様の刺激をした際に生じる両眼の縮瞳反応である。反射中枢は動眼神経核内のエジンガー・ウェストファル核で、やはり後頭葉視覚野の興奮を介さない。動眼神経麻痺や虹彩萎縮の場合などは、視覚が正常であっても対光反射が陰性となる。
対光反射が正常に認められるからといって視覚があるとは限らない点に注意する。
アイリスベット(メラン100)は、瞳孔対光反射をひきおこす受容となるメラノプシン含有神経節細胞の光の吸収波長を利用した検査機器で、メラノプシン含有神経節細胞を刺激する青色光と同細胞を刺激できない赤色光に対する瞳孔対光反射を検査することで網膜疾患と視神経/中枢疾患を簡易的に鑑別することが可能であり、失明の原因を特定する補助となる。
瞳孔対光反射の神経経路 | 視細胞/メラノプシン含有神経節細胞 → 視神経(U)→ エジンガー・ウェストファル核 → 動眼神経(V) |
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【7】細隙灯顕微鏡検査(前眼部)
この検査で分かること | 睫毛異常、眼瞼や角結膜の異常、前房フレアー・出血、水晶体(亜)脱臼、白内障、硝子体変性など |
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輝度を最小限に抑えた開放光にて、眼瞼、角結膜、虹彩、前房、水晶体、前部硝子体までを観察する。マイボーム腺開口部や涙点の状態、睫毛の異常などにも注意する。
次に、輝度を上げてスリット光を用いて、角膜から前部硝子体までのスリット光検査を実施する。虹彩や眼底からの反射光で観察する反帰光線法を用いると、血管新生や混濁が観察しやすい。
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【8】眼圧検査(トノベット)
この検査で分かること | 緑内障、過度の低眼圧(ぶどう膜炎、角膜穿孔) |
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獣医領域で用いられている眼圧測定機器としては、反跳式眼圧計であるトノベットと、圧平式眼圧計であるトノペンが一般的である。
トノベットの利点は、点眼麻酔を必要としないことや、プローブが小さいため角膜病変がある場合でも比較的測定しやすいことが挙げられる。ただし、プローブを地面と水平方向に保った状態で測定することが必要である。
また、点眼麻酔前に実施する(詳細は11を参照)。
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【9】涙液検査
この検査で分かること | ドライアイの有無 |
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涙液検査には、シルマーティアーテスト、フェノールレッド綿糸法などがあるが、無麻酔で実施するシルマーティアーテスト第1法が一般的に用いられる。
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シルマーティアーテスト(STT)
シルマーティアーテストでは、試験紙を下眼瞼の外側から1/3の位置に角膜にふれるように位置(1)して、1分間測定を行う(2)。
試験紙は色素がついているものが測定結果を読みやすい。
犬においては15mm/min以下で涙液減少症の疑いとなるが、誤差が大きい検査であることに注意する(3)。
STT値の評価 | ||
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5mm/min以下 | 6-10mm/min | 11-14mm/min |
重度涙液減少症 | 中等度涙液減少症 | 初期涙液減少症 |
シルマーティアテスト第1法は角膜に刺激を与えた状態での涙液分泌量を測定するものであり、単に涙腺機能のみならず、眼表面から涙腺に至る神経経路の機能を反映する検査であることを認識する必要がある。
●測定に誤差が生じないように、眼球の洗浄や検査用点眼薬などの使用の前に実施する。ただし、シルマーティアーテストは角結膜に対する侵襲性があり、涙液層破壊時間(BUT)の値や眼表面の染色性が変わってしまうため、時間がとれるならば他の検査を実施後10分以上たってから実施する方がより好ましい。
●試験紙のメーカーが異なると吸収率が若干異なるため、STT値が異なる可能性がある。できるだけ同じ試験紙を用いる方がよい。
フェノールレッド綿糸法
フェノールレッド綿糸法は簡便に涙液量を測定する目的で開発された検査法で、疼痛がなく短時間で結膜嚢内貯留類液量を測定できる方法である。
フェノールレッド糸の折り曲げられている先端を下眼瞼結膜に挿入し、15秒間測定する。
犬における正常範囲は30-38mmや29.3±3.45mmと報告されている。
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【10】細隙灯顕微鏡検査(染色検査)
この検査で分かること | 角結膜上皮障害や潰瘍の有無、ドライアイの有無 |
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眼科における生体染色検査には、フルオレセイン、ローズベンガル、リサミングリーンが挙げられる。
フルオレセイン法
コバルトブルーフィルタ光でフルオレセインの染色性を評価する。
フルオレセイン染色では角膜実質が染色されるため、表層性から深層性の角膜潰瘍を診断できる。しかしデスメ膜に至る潰瘍では角膜実質は消失するため、染色されなくなる。
フルオレセイン染色では、生理食塩水や蒸留水、人工涙液点眼薬などを試験紙に滴下し、余分な水分をコットンなどで吸収してから、試験紙の先端をわずかに下眼瞼の涙液メニスカスにあて、数回瞬きさせて角結膜全体を染色し、コバルトブルーフィルターを通した光で観察する。
試験紙を細かく切って使用すると、染色液が過剰になりにくい。
涙液層破壊時間(BUT)は、染色液点眼後に数回瞬目させて涙液層にフルオレセイン染色を広がらせた後に強制的に開瞼させ、涙液層が破壊されてドライスポットが出現するまでの時間を測定して評価する。ただし決して客観性がある検査とはいえず、正常か短縮かの判断は検者の主観によるところが大きい。
シルマーティアーテスト実施後は、試験紙が接触していた部位におけるBUTの短縮や生体染色陽性所見が認められるため、その解釈には注意が必要である。
BUT値の評価 | |
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ドライスポット出現までの時間 | 評価 |
20秒以上 | 正常犬 |
5秒以下 | ムチン欠乏犬(蒸発型ドライアイ) |
ローズベンガル法・リサミングリーン法
白色光でローズベンガルの染色性を評価する。
ローズベンガル染色やリサミングリーン染色ではムチンを失った上皮細胞が染色されるため、角結膜の上皮障害を状態初期の段階でを評価することができる。
ローズベンガル染色は刺激性があり、人医においてはリサミングリーンで代用されつつある。
ローズベンガル染色は、海外には市販の試験紙が販売されているが日本国内での入手は困難である。
筆者は、1%フルオレセイン&1%ローズベンガル検査液を作成し、マイクロピペットにて2μl点眼する方法を用いている。
作成方法は、生理食塩水45mlに10%フルオレサイト静注500mg(日本アルコン)を5ml加え、ローズベンガル500mg(WAKO184-00272)を溶解させたものを0.2μmのフィルターを用いて滅菌し、シリンジに分注して使用する。
冷所で3ヶ月は保存可能である。
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【11】点眼麻酔
トノペンを用いた眼圧測定、超音波検査、隅角検査などを実施する場合は、オキシブプロカイン(ベノキシールなど)で点眼麻酔をする。
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【12】眼圧検査(トノペン)
この検査で分かること | 緑内障、過度の低眼圧(ぶどう膜炎、角膜穿孔) |
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トノペンによる眼圧測定には点眼麻酔が必要だが、どのような方向でも角膜に垂直に圧平できれば測定が可能で、術直後など横臥位の状態でも測定できる。
眼圧測定結果には、年齢、体位や保定方法、測定方法、品種、鎮静などが影響する。
年齢が上がるにつれ眼圧は低下傾向となる。正常犬では頭部を背側にした姿勢は眼圧が低くなる。検査時に頚部や眼周囲を強く保定したり、無理に開眼させたりすると、それだけで眼圧が10mmHg程度上昇するということに十分注意する。
また緑内障の素因がある犬種や水晶体亜脱臼症例では、散瞳後に眼圧が急上昇する場合もあるので、散瞳検査をする場合はその前後で必ず眼圧を測定することを忘れてはならない。
眼圧測定は、結膜充血を起こしている眼では必須の検査とすべきである。眼圧上昇を見逃して結膜炎と誤診すると、数日の間に完全に失明してしまう。眼球が大きくなった時や、角膜浮腫が重度になってからでは、もうすでに視覚回復可能性のない慢性緑内障になっている可能性が高く、その時点でようやく眼圧測定をしてもあまり意味が無い。
さらにいうと、緑内障を発症する前の段階から眼圧のモニターを実施した方が良い場合もある。緑内障好発犬種で、特にすでに片眼が原発性緑内障を発症している場合、残っている眼の眼圧はできるだけ頻繁にモニターすることが勧められる。もともとの眼圧が10mmHg程度であったのに、モニターをしていくと20mmHg前後まで上昇してくるケースなどでは、その時点での眼圧は一般的にいう正常範囲内であったとしても、すでに緑内障の初期となっているといえる。その時点で緑内障治療を強化すべきである。眼圧測定は、“緑内障を確認するもの”というより“緑内障を早期発見するもの”と捉え、より頻繁に測定を実施して欲しい。
先端を角膜に軽く触れて測定する。
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【13】隅角検査
この検査で分かること | 隅角の開放性や櫛状靱帯異形成の有無、炎症細胞などの浸潤の有無 |
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ケッペ式隅角鏡やゴールドマン式隅角鏡を用い、細隙灯顕微鏡や眼底カメラなどで観察・記録する。
ケッペ型レンズは直接型隅角鏡であり、眼球の横の方から観察する。
ゴールドマン型レンズは間接型隅角鏡であり、眼球の正面から反射鏡に映る隅角を観察する。角膜とレンズの間にスコピゾルを用い、気泡が入らないように密着させる。
【14】細胞診
この検査で分かること | 浸潤細胞の量や種類、細菌の量と形態など |
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病変部を擦過するようにサンプリングする。
必要に応じて角結膜やマイボーム腺開口部、眼瞼などの細胞診を実施する。
眼表面のサンプリングにはマイクロブラシを用いると、保存状態の良い状態で細胞が採取できる。
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【15】超音波検査
この検査で分かること | 眼球や眼内構造物の大きさや厚み、水晶体脱臼や破嚢、眼内腫瘤、硝子体変性、網膜剥離、眼窩の腫瘤の有無など |
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角膜混濁や白内障、出血などで眼内が透見できない場合の眼球内構造の評価や、眼窩の病変を評価する目的で用いられる。
通常は10MHz以上のリニアプローブが用いられる。刺激の少ないゼリーを用いて直接角膜にプローブをあてるか、角膜をメチルセルロース(スコピゾルなど)で保護した上でエコーゼリーを満たしたカバーをつけてプローブを角膜にあてる方法が用いられる。
プローブで角膜を押しつけないように両者の間には距離をとり、角膜に歪みが生じないようにする。
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【16】散瞳処置
眼圧上昇や水晶体脱臼がないことを確認し、トロピカミドおよびフェニレフリン塩酸塩合剤(ミドリンP)を用いて散瞳させる。
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【17】細隙灯顕微鏡検査(後眼部)
この検査で分かること | 白内障、水晶体亜脱臼、硝子体変性など |
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散瞳後は、前部硝子体まで観察が可能である。水晶体赤道部付近の混濁や亜脱臼などの病変にも注意して観察する。
【18】眼底検査
この検査で分かること | 網膜剥離、網膜変性症・異形成、網膜視神経炎、緑内障性視神経症など |
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直像鏡、パンオプティック、倒像鏡とレンズなどにより観察する。
直像鏡眼底検査
腕の長さ程度離れた状態でのぞき穴から眼球のほぼ正面を観察し、眼底反射が得られる場所を探す。そのまま接近し眼底が観察できたところで検眼鏡の回転盤を回してピントがはっきりする位置にする。(直像)
視野が狭いが拡大率は高いため、視神経乳頭を詳細に観察する場合などに有効である。
縮瞳している状態では眼底の観察が難しいため、適切な散瞳処置(詳細は 16 を参照)が必要になる。
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パンオプティック検眼鏡眼底検査
直像鏡に比べ約5倍の視野での観察が可能である。
倒像鏡の原理を用いているが、検査法は直像鏡眼底検査と同様で、得られる像も直像である。
倒像鏡眼底検査(単眼/双眼)
●単眼法
単眼法では、徹照法(詳細は 4 を参照)により眼底からの反射光を得た状態を維持し、眼軸に垂直になるようにレンズを挿入することで眼底を観察することができる。
単眼検査になるため立体視はできず、倒像検査であるため上下左右が反転した像(倒像)となることに注意する。
●双眼法
双眼法では双眼倒像鏡を用い、眼底を立体視することができる。(倒像)
光源が倒像鏡に内蔵されているためレンズを持たない方の手がフリーとなり、まぶたを開くことなどに使用できるためより観察がしやすい。また側視鏡やビデオモニター付きのものを用いることで、ご家族や研修医とリアルタイムに眼底像を共有することもできる。
倒像鏡眼底検査では、小さいジオプトリのレンズを用いるとより拡大された像が得られるが、視野が狭く、観察が難しくなる。
通常の観察には20Dもしくはパンレチノ2.2などが用いられるが、視神経乳頭を拡大して観察したい場合などは15Dのレンズ、網膜の辺縁部を観察したい場合や小瞳孔の場合は28Dや30Dなどのレンズが適している。
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【19】眼圧検査
この検査で分かること | ごく初期の緑内障 |
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散瞳後に眼圧が上昇する場合があるため、緑内障のリスクがある症例では必ず再度眼圧を測定する。
おわりに
眼科検査においては、適切な器具を用いて適切な方法で実施することが重要となるため、はじめは眼科検査実習などで正式な方法を習得するとよい。そこから眼科検査の達人になるためのコツは、“習うより慣れろ”である。眼に異常がある症例だけでなく、全ての症例に実施する身体検査に眼科検査を組み入れたり、積極的にアイチェックを実施することをお勧めする。
それにより眼科検査をスムーズに行うことが可能となり、また多くの正常所見を知ることで異常所見に気がつきやすくなるため、眼科疾患を早期に発見して治療につなげることが可能となるであろう。