学術コラム

基礎から学ぶ術前〜術後までの手術の流れ

  • 東京農工大学 獣医外科学教室
    准教授 福島 隆治

【手術フロー】
どんな手術においても、根本となる手技に関する一連の流れは同じものと言える。また、これらの基本的な手技の積み重ねが非常に重要である。今回の特集記事の内容は、筆者が日頃実践しているものであり、あくまでも一例である。よって本特集記事を参考にして、皆様なりにアレンジしていただきたい。手術に関わる個々が、高い意識を持っていただければ幸いである。

【1】手洗い(予備洗い)

手指滅菌前の手洗いについて説明する

1.帽子、マスクをあらかじめ装着した状態で、指先から肘上まで流水で洗い流す(写真1、2)

2.普通石鹸をとり、指先の爪、手掌、手の甲、指間、親指の順に手を洗う(写真3〜6)

3.次に手首から肘までを右手、左手の順に洗う。ここまでの流れを60〜90秒かけて行う(写真7)

4.流水で流した後、ペーパータオルで指先から上腕まで、水分を丁寧に拭き取る(写真8)

ワンポイントアドバイス

ポイント1:指先は下に向けない事(写真左)
ポイント2:ブラシで爪先および爪内の汚れを落とす(写真右)

・流水で流す際には、指先を下に向けて流さないこと。
洗浄後の水分が指先にかかり、手洗いの意味がなくなる。(ポイント1)

・予備洗いでは無菌操作に極端に気をつける必要はないが、出来るだけ清潔な環境下の皮膚で行うこと。

・爪先の汚れがひどい場合は、ブラシを用いて爪内の汚れを落す。その際、手を傷つけないように注意する。(ポイント2)

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【2】手指滅菌法

人医療で主流となっているラビング法について説明する。アルコール擦式製剤による擦式滅菌の場合

1.アルコールを3ml とり、右手爪先をアルコールに浸す。
そして、左手の手掌と約10 回擦り込む(写真9)

2.次に手掌、手の甲、指間、親指の順に約10 回ずつ擦り込む。左手も2 回目のアルコールを3ml とることで、同様の手順で擦り込む(写真10〜13)

3.3回目となるアルコールを3ml とり、右手の手首から肘まで、アルコールが乾くまで擦り込む。左手も4 回目となるアルコールを3ml とり、同様の手順で擦り込む(写真14)

4.5 回目のアルコールを3mlとり、両手の爪〜親指まで(1、2の手順を1回のアルコールで行う)擦り込んで滅菌を終わる。
ラビング法では一連の擦り込みを3 分以上かけて行う(写真15、16)

ワンポイントアドバイス

それぞれの手順では毎回アルコールをとり、乾燥するまで擦り込む。親指は反対の手で包み込むようにアルコールを擦り込むと良い。

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【3】ガウン・手袋装着

介助者と協力して行うガウン・手袋装着について説明する

1.ガウンを袋から出すと、たたまれた状態になっているので、袖の入り口に手を入れて、ガウンを広げる(写真17、18)
ガウンを出すときは、無菌的に取り出す。

2.ガウンの袖に腕を通しつつ、ガウンを前からはおる。この際、手先はまだガウンの外に出さないようにする(写真19)

3.介助者は肩ひもを持ち、ガウンが落ちないように補助する(写真20)

4.介助者は、術者が両腕を通したことを確認後、肩ひもを結ぶ。肩ひもを結んだら、腰ひもも結ぶ(写真21、22)

5.手袋を装着する。外袋は介助者にあらかじめ開いておいてもらい、装着者が内袋を開く(写真23、24)

6.左手袋の親指が左側に来る部分を右手に持ち(写真25)、そのまま右手を使い手袋をはめる。
折り返し部分はそのままにしておく(写真26)

7.手袋をはめた左手の指を右手袋の折り返し部分に入れる(写真27)。次に右手を手袋内に入れた状態で、右手袋の折り返し部分を折り返す(写真28)

8.左手の折り返し部分に右手で手を入れ、折り返す(写真29)
最後に両手を組むなどを行い、手袋を指先まで入れる(写真30)

ワンポイントアドバイス

・ガウン装着後は手を前に上げ、滅菌状態を確実に持続させるため腰より下に下げない

・手袋は滅菌状態なので、手袋を装着する際には手袋の表面に触れないようにする

・手袋装着後は手を前で組み、周囲に触れない

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