学術コラム

基礎から学ぶ術前〜術後までの手術の流れ

  • 東京農工大学 獣医外科学教室
    准教授 福島 隆治

【手術フロー】
どんな手術においても、根本となる手技に関する一連の流れは同じものと言える。また、これらの基本的な手技の積み重ねが非常に重要である。今回の特集記事の内容は、筆者が日頃実践しているものであり、あくまでも一例である。よって本特集記事を参考にして、皆様なりにアレンジしていただきたい。手術に関わる個々が、高い意識を持っていただければ幸いである。

【4】留置

術前〜術後まで必要不可欠な静脈留置を確保、ここでは橈側皮静脈留置を説明する

【準備しておくもの】
留置針、サージカルテープ、自着性包帯、粘着性包帯、プラグ、ヘパリン加生理食塩水、シリンジ(5〜10cc)、注射針(23G、16mmと25mm、予備針を用意)、消毒関連用品

1.挿入部分の被毛をバリカンを用いて除去する(写真31)
アルコールやヨード系薬剤により十分に消毒を行う(写真32)

2.橈側皮静脈が確認できる様に保定し、針の長さ、静脈の走行と有効距離を把握し、針を血管内に挿入する(写真33)
血管に針が入ると血液が流入してくるので、必ず確認する(写真34)

3.留置針は、ある程度の長さ(目安は針長の1/3〜1/2)まで金属製の内筒を付けたまま挿入し、外筒を進める(写真35)
留置針の挿入後は、ヘパリン加生理食塩水入りのプラグを接続する(写真36)

4.留置針の皮膚へのテープ固定を直ちに行う(写真37)
留置針の固定後、迅速にヘパリン加生理 食塩水を注入し、留置針とプラグ内の血液凝固を防ぐ(写真38)

ワンポイントアドバイス

ポイント3:18G 針を使用したカットダウン

・肥満、皮膚が硬い(特に猫)、血管が細いなどの動物に対して、注射針やメス刃を用いて皮膚のカットダウンを行うと、留置針の挿入が比較的簡易になることがある。(写真ポイント3) ヘパリン加生理食塩水を注入するのは、あらかじめ患者用にテープを用意しておき、迅速に針を固定した後の方が確実である。

・注入する生理食塩水の量は必要以上注入することを避け、特に循環器疾患を有する患者には注意すること。

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【5】点滴

術前に必要な点滴について説明する、輸液剤については割愛する

【準備しておくもの】
翼状針、サージカルテープ、自着性包帯、粘着性包帯、輸液セット、輸液ポンプ 延長チューブ、三方活栓、消毒関連用品

1.固定した後の留置針につないだプラグに翼状針を接続する(写真39)。この際には、翼状針や点滴ラインが外力によって外れないよう な工夫が必要になる。
工夫の一例を挙げるので参考にしていただきたい。

2.翼部分に貼り付けたテープを固定し、さらにラインにループを作成し、動物の腕にラインを接着した一例(写真40)

3.また自着性包帯で補強・保護するとよい(写真41)

ワンポイントアドバイス

・麻酔導入前まで時間がある場合は十分に水和を行う。

・静脈ルート確保に失敗した血管への再挿入は、既に空いた穴から皮下や筋肉へ薬液の漏れが生じるため、極力避けるべきである。

・抗がん剤等では漏出による組織壊死、免疫低下の動物では全身性炎症反応を引き起こす可能性もある。

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【6】麻酔準備

投与量・種類を間違えると命に関わり、特に注意が必要な所

基本には獣医師が行うが、動物看護師も一連の流れを理解しておく。それにより効率的に術前準備が進み、医療ミスを防ぐことで チーム医療としての理想形に近づくことができる。

1.麻酔薬の準備をする。
患者ごとに麻酔プロトコールを作成することが重要である。患者の状態を 総合的に診断して、麻酔薬の選択を行う(写真42)

2.麻酔量の計算を行う。
特に異常がなければ、体重量あたりの投与となる(写真43)
計算は2名以上で各2回以上計算を行うことで投与ミスが防げる(写真44)

3.麻酔薬準備。
導入の際、薬品は一箇所にまとめておく(写真45)

ワンポイントアドバイス

麻酔薬、麻酔前投与薬の計算は最低2名以上、各2回は計算を行い、計算結果が合っているか確認すると良い。獣医師はもちろん動物看護師も使用している麻酔がどの様なものかを理解しておくとより良い。また、準備した薬品は、間違いのないように目印をつけておくこと。一連のアクションは医療ミスを起こさないためである。

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