エキゾチックアニマルの診察の基本

酪農学園大学 獣医保健看護学類
准教授 佐野忠士
近年、動物のリハビリテーションの重要性は認識されつつありますが、対象症例および手法の選択を誤ると症状を悪化させる恐れがあります。リハビリテーションは医療行為であり、患者の症状・状態を把握している獣医師の指導の下、動物看護師、飼い主さんが協力して行う事が正しいリハビリテーションと言えます。今回は基本的なリハビリテーションの流れの一例をご紹介します。

【1】リハビリテーションを行う理由

リハビリテーションは、整形外科疾患や神経疾患の動物における機能回復に重要な役割を果たすことが認識されており、近年、非常に注目されています。
発症後または術後のなるべく早期からリハビリテーションを行うことで、疼痛や炎症の軽減、筋力増加、QOLの改善などの効果が期待されるため、積極的に行う事を推奨します。
特定の疾病を除き、できるだけ早期に実施することが推奨されますが、選択を誤ると症状を悪化させることになるため、正しい手法の理解、適応症の理解など十分な知識と経験の融合が必要となる医療行為です。そのため患者の症状・状態を把握している獣医師の指導の下、動物看護師、飼い主さんが協力して行う事が正しい形と言えるでしょう。
ここでは、これからリハビリテーションに取り組まれる方はもちろん、現在取り組まれている方にも、もう一度リハビリテーションを正しく理解していただき、正しいリハビリテーションを実践するための概要について解説していきたいと思います。

【2】リハビリテーションのメリット・デメリットの理解

正しく効果的なリハビリテーションを行うためには、リハビリテーションのメリット・デメリットを理解しておかなければなりません。

メリット
1.体全体/ 精神のコンディションを良好に保つことが出来る
・回復の促進
・疼痛緩和
・運動能力
・運動の質の改善
・力と持久力の向上
・柔軟性の改善
など

2.非侵襲的なアプローチであるため動物も飼い主も快適である事(=苦痛を伴わない治療)

3.動物及び飼い主のQOL 改善のために有用

4.飼い主参加型で予防/ 再発防止にも重要

デメリット
1.全ての病態をリハビリで治療できる訳ではない
・種々の検査による正確な病態の把握、診断
・リハビリテーションの位置づけの認識
が重要

2.誤った手法での実施による病態の悪化、改善が認められない
・「正しい」手法の理解の重要性を認識

3.時間・人手など
・やって直ぐ治るという治療ではない
・一人で行うことが難しいので人手を要する場合がある

【3】各種リハビリテーションの分類・効果の理解

リハビリテーションは、整形外科疾患や神経疾患の動物が、本来有する機能の回復のために有効な治療手段であります。
その効果を最大限引き出すには各種リハビリテーションのもたらす臨床的効果をきちんと理解することが重要です。ここでは、代表的なリハビリテーションの内容とその効果を挙げてみた いと思います。
目的 有効なリハビリテーション項目
関節可動域(ROM)の改善 屈伸運動、他動的関節可動域(PROM)訓練、運動療法、水治療法、カバレッティレール等
筋力維持および増加 マッサージ、神経筋電気刺激法(NMES)、運動療法、PROM 引っ込め反射の誘発、水治療法、カバレッティレール等
屈筋群の強化 水治療法、カバレッティレール等
神経機能の改善 引っ込め反射の誘発、マッサージ、PROM、NMES、補助起立・歩行、水治療法、体重負重訓練、 バランスボード・ボールエクササイズ、運動療法、カートセラピー等

それぞれのプログラムの詳細に関しては、後述します。

【注意】これらのリハビリテーションは時期と方法を間違えると症状が悪化することがあるため適応時期・適応症の選択には十分注意しましょう。

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