エキゾチックアニマルの診察の基本
- 酪農学園大学 獣医保健看護学類
准教授 佐野忠士
【10 】特殊治療
水中トレッドミル
メリット
・水の浮力による免荷が出来る
・水深により免荷の程度を調整できる
・水の抵抗により運動量が増える
・屈曲の関節可動の強化に適する
・歩行のリズムを学習させられる
デメリット
・水そのものの管理が煩雑になることがある
・伸展の関節可動の強化には不向き
・手術直後の適用には注意が必要で感染症を有する症例には使用できない
・水を怖がる症例が少なくない
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陸上での特殊治療(免荷歩行訓練装置;BWS)
メリット
・起立保持、バランス訓練に適する
・歩様改善、筋力増強、持久力改善にも適する
・歩行トレーニングを早期に開始する事が可能
・傷口からの感染のリスクが水中の場合よりも低い
・ランニングコストが低い
デメリット
・水中の場合よりも人手が必要
・訓練に適した動物用製品が少ない
・水の抵抗による筋力増強と比べ期待値が低い
最近の免荷歩行訓練装置(BWS)は、「人手がいる」などの今までのデメリットを改善した製品が発売されている様です。水中、陸上それぞれメリット/デメリットはありますが、今後、動物に対しより良いリハビリテーションの実践により適した製品が出てくる事を期待します。
【11】飼い主への指導、アフターケア
退院後リハビリテーション通院になった場合、退院時もしくは通院初日に、治療にかかる費用と割けられる時間についてしっかりと話し合うことは、リハビリテーションの効果を得ると同時に、飼い主さんの継続治療の意識を促進する上で、非常に重要です。
また継続通院を促すことで、現在の動物の状態と自宅でのリハビリテーションの様子を知ることができ、より適切なリハビリテーションプログラムを組むことができるようになります。
リハビリテーションのサポートグッズ
最近では関節の保護・固定用のプロテクターやサポーター、関節拘縮・筋肉障 害に有効な保護製品も販売されているため、これらを利用することで自宅での リハビリテーションの一助になると考えられます。
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おすすめのサプリメント
医薬品成分以外にも食餌中、サプリメント等に含まれる成分で、疼痛管理に有効とされる成分として抗炎症に関与する働きがあるとされる多価不飽和脂肪酸(PUFA)があります。この成分は食餌やサプリメントとして自宅でも手軽に与えることができるため、疼痛管理の一つの要素として有効といえます。ここでは多価不飽和脂肪酸(PUFA)について述べたいと思います。
ω-3系とω-6系の必須多価脂肪酸は同じ代謝酵素をめぐり競合します。そのため、これら両成分をバランスよく含む物を給与することが重要で、それぞれの役割をしっかり理解しておくことで、抗炎症作用の理解がしやすくなります。
特殊な治療法として水中トレッドミルを用いたトレーニングがあるので、少しご紹介します。
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アフターケア
リハビリテーションは獣医師・動物看護師・飼い主さんが協力して行うため、3者の連携が必要となります。
そのためにはリハビリテーションを主導する獣医師は、正しいリハビリテーションの知識や手技を身につける必要があり、院内でのリハビ
リテーションでは動物看護師、自宅でのリハビリテーションでは飼い主さんと役割に応じた指導をしなくてはいけません。飼い主さんの継続治療のためには、飼い主さんへのモチベーションを維持することが重要です。
飼い主さんと距離の近い動物看護師に、飼い主さんの心のケアや飼い主さんとの密なコミュニケーションの役割を主導してもらうこと
も、良いリハビリテーション実施のための近道と言えるでしょう。
最後に
動物におけるリハビリテーションは未だ発展途上ですが、その重要性はすでに認識され、実施される施設が増えつつあります。ここで書かれている内容は教科書的な情報と併せ、私が実際の症例に対し実践してきたものです。全ての症例で「全く同じ方法で全く同じ結果を得る」ことが不可能であることはご理解いただけると思います。しかし、リハビリテーションに取り組まれている先
生方、もしくはこれから始めようとされている先生方にとって今回の記事が「正しいリハビリテーション」を実践する一つの参考になっていただけることを強く願っております。
今後、正しい知識と、正しい経験の蓄積により、今以上にリハビリテーションを必要とする多くの動物達とその飼い主さんに幸せが訪れることを願ってやみません。