エキゾチックアニマルの診察の基本

酪農学園大学 獣医保健看護学類
准教授 佐野忠士
近年、動物のリハビリテーションの重要性は認識されつつありますが、対象症例および手法の選択を誤ると症状を悪化させる恐れがあります。リハビリテーションは医療行為であり、患者の症状・状態を把握している獣医師の指導の下、動物看護師、飼い主さんが協力して行う事が正しいリハビリテーションと言えます。今回は基本的なリハビリテーションの流れの一例をご紹介します。

【7】徒手療法 マニュアルセラピー

徒手療法の目的

影響の生じている軟部組織の治療

期待できる効果

リラックス効果、循環・リンパ排液の促進、痛みの緩和等

徒手療法の種類

マッサージ・ストレッチ・モビライゼーション

マッサージ

動物が耐えられる適切な圧力をかけながら、ゆっくりとリズミカルに行います。

適応部位

問題の生じている部位とその対側の軟部組織

回数目安

1回それぞれ5分、1日2 〜 3 回

注意点

食後少なくとも2 時間後、排便・排尿は済ませておきましょう。 技術や経験を必要とする手法であり、動物を横にすることも多いため、動物をリラックスさせられるマットやトリートメントテーブルを準備することをお勧めします。

具体的なマッサージ法

人員:1 〜 2 人 (小・中型犬:1 人、大型犬以上:2 人)
必要器具:リラックスマット、トリートメントテーブル

マッサージの 種類 方法 効果・適応
エフラージ
(軽擦法)
・ 静脈性血行循環の流れに沿って行う
・ 掌全体が患者に触れるようにし、体表面を滑らせるように手を動かす
・ マッサージの開始と終了時に行う
・ リンパの循環改善にも効果
スクィージング ・ 掌が体に付着するように行う
・ 筋肉を掴み優しく圧搾する
・ 筋緊張
・痙攣の緩和、発痛点の解除に効果
ニーディング ・ 親指と残りの4 本の指の腹全体を使う
・ リズミカルに小さな半円を描く
・ 停滞した老廃物の除去、リラックスに効果
・ 表層の大きな筋肉(広背筋等)に○
リングアップ
(絞り法)
・ 掌の平坦な部分と親指を90 度にする
・ 筋肉を持ち上げ優しくゆらす
・ 組織内への酸素供給、毒性物質の除去
・ 胸部、肩部、後肢等に○
スキンローリング ・ 皮膚を丸めてつまむように行う ・ リラックス、皮膚の血液循環改善、癒着防止
・ 頚部〜背部への適用が○

*上記4種のリハビリはペトリサージ(揉捏法)の1種で、それぞれマッサージ箇所に適切な圧力をかけながら行う。

覚えておくと良いポイント
トリガーポイント

・ 負担のかかる筋肉の奥深くに存在する凝り固まった部分(虚血による硬結)のことです。
・ 痛みの引き金点であり、進行すると別の場所に痛みを生じる原因となります。こうして生じる痛みを関連痛といいます。

トリガーポイントの弛緩

【1】1 〜 3 本の指を用いてトリガーポイントに20秒程力を加えます。
【2】加えた力を10 秒かけて緩めます。
【3】1、2を3〜4セット繰り返します。

ストレッチ

目的:筋肉の伸長、ROM(関節可動域)の回復、筋拘縮軽減

適応症例

不動化が続き可動性が減少した関節
損傷を受けて線維化した関節や筋肉

種類

自発的ストレッチの様子(頚部伸展)

自発的ストレッチと他動的ストレッチがあります。

ストレッチの種類 歩様
自発的 ・ 動物自身が動かす
・ 通常のROM を超える動きはない
・ 筋収縮、関節運動の協調性が保たれている必要がある
他動的 ・ マッサージに続けて行う
・ 目的とする部位のみに対して行う
・ 患部以外は中立位状態で維持する
他動的ストレッチ法

他動的ストレッチ法
左:後肢伸展保持時 右:後肢屈曲保持時

関節可動域(PROM)の限界ぎりぎりもしくは少し過ぎる範囲まで、ゆっくり関節を伸展し、15 〜 30秒間保持します(保持することがポイント!)。その後、同様に可動域ギリギリもしくは少し過ぎる範囲までゆっくり屈曲し、15〜30 秒間保持します。この繰り返しを1回1セットとします。→ 20 セット以上を1日1〜 3 回行います。

モビライゼーション

目的:強制力を制御して行う徒手療法の一つであり、関節可動域内で細かく動かすことで効果を発揮します。

モビライゼーション方法

モビライゼーション

両手を用いて行い、手と手の間は一つの関節のみにします。 片手で保持、もう一方の手のみで関節を律動的に動かし、痛みのない範囲でゆっくり細かく行います。


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